4 防衛するため
「防衛するため」といえるためには、当該防衛行為が客観的に防衛に向けられている必要があります。したがって、防衛行為によって、侵害者以外の第三者の法益を侵害するような場合には、正当防衛の成立は否定されます(ただし、緊急避難が成立する可能性はあります。)。
また、判例は「防衛するため」の内容として、客観的に防衛行為としての性質を有していることに加えて、防衛の意思を要求しています。防衛の意思は比較的広く解されており、攻撃の意思が併存していても防衛の意思が認められうるとされています(最判昭50.11.28)。
5 やむを得ずにした行為
正当防衛が認められるためには、防衛行為が「やむを得ずにした行為」といえることが必要です。どのような場合に「やむを得ずにした行為」といえるかはケースバイケースですが、裁判例では、侵害行為と防衛行為の危険性を比較して判断される傾向にあります(武器対等の原則)。
なお、正当防衛は、「違法」な行為に対する防衛行為であることから、防衛行為者には侵害者に対して優越的地位が認められています。したがって、防衛のために他に手段がないこと(補充性)ということまでは要求されず、また、回避した法益侵害を防衛行為によって生じた法益侵害が上回っていたとしても、正当防衛の成立は否定されないと考えられています。