プラトニックな不倫?

弁護士 金﨑 浩之


1 大阪地裁が、今年の3月におもしろい判決を出しました。

  肉体関係があったとは認められなかった事例で、不貞行為の相手方に対する損害賠償請求(慰謝料)を認めたんです。

 ということで、”プラトニック不倫”と呼ばれています。

 妻が夫の会社の同僚女性を不貞行為の相手方として訴えた事件です。

 裁判所が認定した事実によると、男性のほうは何度も肉体関係を迫ったとありますが、女性のほうがそのような関係になることを拒んできたとか。

 それなのに、その女性に損害賠償義務が認められてしまいました。

 その女性、ちょっと可哀想だね。

 プラトニック(肉体関係がない)な関係とはいえ、その女性が夫と交際していたことによって、夫の妻に対する態度が冷たくなり、そのことにより妻は精神的苦痛を被ったということだそうです。

 う~ん、そんなことでも損害賠償義務が生じるんだ…。

 何度も肉体関係を迫った男(夫)のほうが悪いと思うけど。

2 とはいっても、裁判所が命じた賠償額は少額です。

 わずかに44万円ですから。

 肉体関係があったとは認められないから少額ということなんだと思いますけど、夫が妻以外の女性と交際した場合の妻の実害は千差万別だと思います。

 例えば、外泊の有無とか頻度とか、クリスマスや年末年始の家庭サービスの有無とか、あるいは普段のデートの頻度や、子どもがいる場合の子どもたちとの交流の頻度とか…。

 プラトニックな関係って言っても、妻側の被った損害の程度はケースバイケースだと思うんです。

 したがって、事例によっては、44万円よりもずっと高額になる可能性もあるんじゃないか、という気がします。

3 いずれにしても、この大阪地裁の判決が、他の裁判所を巻き込むトレンドとなるのか、それともあくまでも例外的な判例と見るべきなのか。

 今後の裁判所の判例を待たなければ何とも言えないような気がします。

 でも、この女性、控訴するのかなあ。

 多分、控訴するんだろうなあ。

 ボクが代理人弁護士だったら、控訴を勧めると思います。