生じて有せず 為して恃まず 長じて宰せず
これは老子51章に出てくる言葉です。
ボクは、中国の古典が好きで、論語とか韓非子とか色々読むんですが、言葉的には、この老子の言葉が一番好きです。
生じて有せず
これは自分が創造したものであっても所有しないという意味です。自らが創り出したものであっても、これを私物化しない、公の心です。
為して恃まず
これは自らが為すべき事として為した事に対して、見返りを期待しないという意味です。この心構えが出来てくると、自分のやるべきことが見えてきます。
そして、最後に、
長じて宰せず
これは自分が育てた組織が成長しても、これを仕切らない、という意味です。組織が成長すると、どうしてもトップとして仕切りたくなります。が、そこをあえて仕切らず、いざとなったらトップの座もあっさり他人に引き渡すことができる。
トップの姿勢は、その志が自己の野心にあるのか、それよりももっと大きな目標にあるのかで違ってきます。目標が個人的野心を越えた、大きな所にあれば、トップの座なんて小さなものに見えてきます。
弁護士法人ALGが大きく成長し始めたのも、ボクが、この老子の言葉を実践しようと決めてからでした。
広告力とそれを支える資金力があれば、仕事を集めることはできます。
しかし、人は育ちません。
不満もたくさん出てきます。
優秀な人は辞めていきます。他に行くところがない人だけ残ります。
こうして、仕事の質は大きく下がり、その最終的なツケは顧客にまわってきます。
そして、最後には顧客からの信頼を失い、仕事を失います。
では、老子の言葉を実践すると何が変わるのか…。
まず、信頼関係が生まれます。部下がボクを信頼するようになるので、ボクも部下を信頼することができるようになります。
その結果、ボクも安心して重要なマターの多くを権限委譲できるようになります。
会議の時でも、部下からエゴ的な発言が少なくなります。組織を”公器”と考えて、協調的な態度を取ってくれるようになりました。
お陰様でボクは今、とても楽です(笑)。ボクは今、日本で最もストレスの少ない経営者かもしれません。
そして、ボクの理想は、老子17章にあるように、
大上は、下之あるを知るのみ
の域に達することです(笑)。