弁護士 金﨑 浩之 

 本日、東京弁護士会で、専門家認定制度に関する意見交換会がありました。

 意見交換会は、東京弁護士会の業務改革委員会のメンバーと、専門分野の研究をしている各法律研究部のメンバーとの間で行われました。

 東京弁護士会には、医療過誤法部、金融商品取引法部、家事法部、刑事法部などの法律研究部がありますが、これらの研究部への加入義務はなく、いずれの研究部にも所属しない弁護士もたくさんいます。
 
 ボク自身は、医療過誤法部に所属しているのですが、業務改革委員会にも所属しており、今回の意見交換会には、業務改革委員会のメンバーとして同席しました。
 念のために申し上げると、これはあくまでも意見交換会であり、決議をして何かを決めるという性質のものではありません。

 さて、本論に入りますが、各法律研究部から出された意見としては、同制度を導入することに反対というのがほとんどでした。
 理由は概ね以下の通りでした。

1 専門性を認定するための合理的基準を定めることが困難であるし、その判断も容易ではない。
2 研修などの座学程度で認定証を発行することは問題がある。
3 専門認定を受けた弁護士に関するクレームが出た場合に、弁護士会は責任を取れない。

 もっとも、顧客が専門家を求めているという現状認識については、賛同が得られ、弁護士会として専門家を養成するための仕組みや制度を構築していくことにも賛同が得られました。

 ボクは、この会議の結果に概ね満足しています。

 業務改革委員会所属の弁護士さんの中には、この制度を導入したいという見解をお持ちの人もいたようですが、ボク個人としては反対でした。

 ボクの意見は、”制度設計次第”で同制度の導入にも賛成できるというものだったんですが、弁護士会が専門認定するにふさわしい要件を定めたら、専門認定される人は少数にとどまると思っています。

 ”誰が専門家か分からない”というのは、弁護士を利用する市民にとってよくないのは分かるのですが、弁護士と市民との間の情報コミュニケーション以前の問題として、そもそも専門家が少ないというのがこの業界の実態であると思えるからです。
 専門家情報を世の中に発信していくのであれば、専門家がたくさんいることが大前提だと思います。

 したがいまして、弁護士会としてまず取り組むべき問題は、専門家の養成だと思います。
 弁護士会が取り組んでくれていないので、ボクの場合は、所属事務所内で取り組んでいます。

 例えば、ボクは今、所属する法律事務所の”医療事業部長”に就任していますが、うちの事務所の医療事業部では、同事業部に所属する新人弁護士に対して、解剖生理学の試験を課し、これに合格することを義務づけています。また、同事業部に所属する全ての弁護士に対し、医療過誤問題に関する専門ブログへの執筆を義務づけ、医学的知見と医療過誤判例の知識を増やせるようにしています。さらには、カルテによく出てくる検査値の読み方勉強会や、医療判例ゼミ、医師を講師として招いての歯科の勉強会なども随時開催するなどして、専門性を強化するための努力をしています。

 なので、弁護士会でも同じような教育制度を作ってくれるのであれば、うちの所属弁護士にも参加してもらいたいと思います。

 せっかくの機会ですので、今後、弁護士会に対し、専門家養成制度の構築に向けた意見を提言していきたいと思います。