弁護士 金﨑 浩之 

 昨日、弁護士登録の推薦制度について書きましたが、情報共有のため何点か補足します。

 まず、この制度の現状についてですが、ボクの法律事務所も地方進出をしていますので、その際に知ったおもしろい情報です。

 最初の類型は推薦人不要型です。大阪弁護士会は、この制度をすでに廃止しております。大阪弁護士会に登録する場合、推薦人は不要です。ボクの知る限り、現在推薦人を明確に不要としている弁護士会は大阪弁護士会だけです。見習いたいですね。

 次の類型は推薦人推奨型で、推薦人は必須ではないが、いたほうが望ましいとしている弁護士会です。この類型に入るものに、東京弁護士会や栃木弁護士会などがあります。両弁護士会では、推薦人が全くいないのに、入会を認めた実例が過去にあります。

 第三の類型は、推薦人を必須としている類型です。多くの弁護士会が建前上、この制度を採用しているようです。ただ、上の第二の類型との峻別は外観上困難です。というのは、第二の類型に入る弁護士会も、推薦人が必須ではないことを公にしていないからです。したがって、一見すると、第二類型の弁護士会も第三類型に見えてしまうのです。
 どちらのタイプに入るのかは、実際に弁護士登録の際に、その弁護士会とかけあってみないと分かりません。栃木弁護士会のケースも、推薦人なしでやってみたら通っちゃったことで推薦人が必須ではないことが判明したんですね。

 昨日のブログでも書いたように、推薦人がいないと入会・登録を認めないというのは、違法である可能性が高いんです。だから、実際には、推薦人なしで登録申請をしてみれば意外と通ってしまうケースが多いのではないかという気がしています。

 ちなみに、推薦人必須論を唱える人たちのロジックをひとつ紹介します。
 推薦人必須論の支持派は、推薦人は、被推薦人である弁護士の会費支払債務の連帯保証人になっていることをあげます。つまり、会費を支払えない弁護士の入会を認めるわけにはいかない。したがって、弁護士登録の際には、会費の支払債務の連帯保証人すなわち推薦人が必要だ。だとすると、連帯保証人=推薦人がいない以上、入会を認めるわけにはいかない、というロジックです。
 このロジックをまことしやかに使って、「う~ん、推薦人になってあげたいんだけどねえ。連帯保証することになるでしょ。信用しないわけじゃないんだけどねえ。ほかを当たってくれない?」などと言って断ってくる人もいます。

 はっきり言って、このロジックはインチキです。
 ボクも、過去に多くの弁護士さんが東京弁護士会に入会する際に推薦人として署名捺印してきましたが、彼らの会費支払債務を連帯保証したつもりは毛頭ありません。
 そんなこと入会申込書のどこにも書いていません。単に、「推薦人」と書かれた欄があるだけです。これは東京弁護士会に限りません。それなのに、実は連帯保証契約が成立していたなんて、だまし討ちにあったような気分です。
 もしも、これまでにボクが推薦人として署名捺印してあげた弁護士さんが会費を滞納して、ボクに請求がきたら絶対に保証否認します。訴えられたら争います。絶対にボクが勝訴するでしょう。なぜなら、現状の入会申込書の体裁は、連帯保証契約書の内容としては不備だらけだからです。
 普段からクライアントの契約書をレビューしている弁護士がこんなことでいいのでしょうかねえ。

 実際に、推薦人に請求したなんてケースは聞いたことがありません。会費滞納者の弁護士が懲戒処分されるだけです。中には、会費の滞納が何年も続き、弁護士会から退会命令を出された弁護士さんもいます。

 いずれにしても、不透明で怪しい議論が飛び交う推薦人制度なんです。