医療事件を専門とする弁護士としては、内科学の本は一冊くらい通読しておきたいものです。

 さすがに、「ハリソン内科学」では荷が重いので、600ページ程度の「シンプル内科学」というのを通読したのですが、その際に、すごい病気を見つけてしまいました。

     精巣性女性化症候群

という病気です。

 ”女性化”ということですから、男性の病気です。

 何がすごいのかというと、この病気に罹った男性には、女性のような発達した乳房があり、膣がある。声や性格も女性的でカラダのラインも通常の女性と変わらない。ペニスもありません。つまり、外見は、全くフツ―の女性です。

 では、何が違うのかというと、卵巣と子宮がありません。なので、子どもを宿すことはできません。代わりに精巣があるのですが、これが腹腔内に隠れている。普通の男性ならこれが股間にぶら下がっているわけですけれども、これがお腹の中に隠れている。だから、外見上は完璧な女性なわけです。

 しかし、そうだとすると、この病気に罹った人を、男性と呼ぶべきか女性と呼ぶべきかは微妙だと思いませんか?

 確かに、隠れているとは言え精巣があり、子宮と卵巣がないわけですから、男性だと言えそうですが、ペニスがない代わりに膣があります。大人になれば、女性として男性と性交渉を行うことは立派にできます。
 なかなかこれを”男性”と割り切るにはいささか抵抗があるのはボクだけでしょうか…。実際にこの病気の人は、女性として社会生活を送っているそうです。

 それなのに、この病気に罹った人が男性とされるのはなぜなのでしょうか…。

 それは、この病気の人がXY染色体を有しているからです。

 な…なんと!染色体のレベルで男性と定義されているそうなんです。

 なんというミクロな話…。

 医学ってすごい…。というか恐い。

 女性のような声、女性のような性格、乳房も膣もあり、カラダのラインも女性。このような人を男性として理解するのは不可能に近い。でも、この人は男性。なぜなら、XY染色体を有しているから!

 この医学の”割り切り”がすごい。

 思わず、男ってなんだろう、女ってなんだろうって、考えさせられてしまいました。

 ちなみに、この逆の病気、つまり、女性の男性化症候群という病気はないようです。
 別の意味で男性化している女性はいっぱいいますけどね(笑)。