テレビのニュースで観たのですが、昨年の暮れに司法研修所の修習を修了した司法修習生のうち、裁判官や検察官になった人を除き、約540人(約26%)が弁護士登録をしていないことが分かったそうです。

 裁判官・検察官にならなかった人は、そのほとんどが弁護士になるはずなので、これは就職先が見つからなかった修習生の人数であろうと推測されます。

 540人というと、4人に一人は就職できなかった数字になり、過去最多だそうです。修習期でいうと65期の司法修習生です。

 日弁連は、司法試験合格者の大幅増員が背景にあると見ているようですが、でも数年前から年間合格者は2000人を越えてます。なぜ、今期の修習生の就職難が「過去最多」になったのでしょうか。

 もちろん、就職難の背景には、合格者数の大幅増員があるのは疑いないのですが、昨年それが最多になったのは、いわゆる過払いバブルの崩壊が根っこにあるからだと思います。

 新司法試験が始まり、合格者の数が増え始めた頃、ボクらの業界は過払いバブルの真っ只中にありました。
 クレサラ専門の法律事務所の中には、弁護士100名を越える急成長振りを見せた事務所もあり、また、弁護士数名程度の一般の法律事務所でも過払い案件がその経営を支えていたというのが実態です。
 つまり、司法試験合格者が増員された頃、ボクらの業界自体は景気がよかったんです。したがって、良いか悪いかは別として、過払いバブルが急増した合格者の受け皿的な役割を果たしていたと思うんです。

 ところが、過払いバブル崩壊後、昨年あたりから、クレサラ専門の法律事務所の多くが規模の縮小をはかり、中には全支店を閉鎖し、代表弁護士が弁護士会から退会しちゃった、なんて事態も起こっています。
 過払いがなくなった今、法律事務所は過当競争に直面し、若い弁護士を採用するところか、自分たちが食べていくのが精一杯という状況に追い込まれています。過払いバブル崩壊との関係はわかりませんが、成年後見人をつとめていた弁護士がクライアントの資産を着服するという事件も、東京と大阪で1件ずつ起こっています。

 何が言いたいのかというと、約540人もの司法修習生が就職できないという事態は恒常化するのではないか、というのがボクの読みなんです。

 そして、すでに開業している弁護士は、仕事がなく、自転車操業に陥り、今後も弁護士の不祥事は増えていくだろうと思います。
 この問題を解決する特効薬はありません。
 日弁連は合格者を減らすことで対応すべきだと考えているようですが、すでに大都市は飽和状態で過当競争にあり、弁護士が厳しい経営環境に直面していることにかわりはありません。

 うちは幸いにして仕事の依頼はたくさんあるのですが、弁護士全体に対する社会の信頼が下がっていることは、ボクの事務所の弁護士にとっても決して良いことではありません。
 このような厳しい経営環境の中で、如何にしてクライアントの信頼をつなぎ止め続けることができるかが、今後の法律事務所経営の大きな課題だと思っています。