ボクが修習生の時代もそうでした。
でも、企業法務って、響きが格好よく、イメージ先行な気がします。
そこで、修習生たちにこんな質問をしてみました。
「使用者側の代理人としてやる労働事件は企業法務ですか?」
ある修習生はこう答えました。
「企業法務だと思います」
「では、損保会社の代理人としてやる交通事故の事案は企業法務ですか?」
「企業法務…だと思います…」
このやりとりで分かったのは、修習生のイメージでは、企業法務とは、要するにクライアントが事業主だということでした。
でも、労働事件の労働者側の弁護士や、交通事故の被害者側の弁護士は、たぶん労働事件や交通事故を企業法務とは考えていないと思います。
同じ法律を扱っているのに、立場によって企業法務だったり、企業法務でなかったりするのはおかしいと思います。
では、銀行がある法人に貸し付けている5億円の返済が滞り、その法人に対して貸金債権の回収をしようとしている場合において、銀行の代理人弁護士がやっていることは企業法務でしょうか?
銀行の顧問などをやっている四大の先生方は、たぶん企業法務だと言うでしょう。
一見、法人同士なので企業法務であるかに見えます。
では、銀行が個人に貸し付けた5億円の返済が滞った場合はどうでしょうか?この場合は、法人対個人です。法人の代理人になろうと、個人の代理人になろうと、扱う法律は同じです。
ちなみに、修習生が大好きな知財。これはさすがに企業法務だと思われそうですが、本当でしょうか?
ボクは、過去に個人の代理人として著作権侵害の訴訟をしたことがあります。
個人が著作権や特許権を有しているケースはいくらでもあります。個人の代理人としてやる知財は企業法務ではないが、法人の代理人としてやれば企業法務になるというのはいかがなものでしょうか?
企業法務に関心の高い修習生のみなさん。
本当にやりたいことをもう少し掘り下げて分析してみる必要がありそうです。