その我に 背かざるを恃まず
我 背くべからざるを恃む
- 韓非子
(訳) 他人が自分を裏切らない、などということを当てにしてはならない
裏切りたくても裏切れないような体制を築くべきである
秦王(後の秦の始皇帝)に仕えていた韓非子の言葉です。
内容から、一見すると性悪説的な立場を取るようにも見えますが、韓非子は法家を代表する古代中国の思想家ですから、これは組織を統率する人物が持つべき心構えとしての実践的哲学を述べたものだと思います。
ボクも法律事務所の経営を初めて10年くらい経ちますが、実際に経営トップとして組織を運営していると、この言葉の意味がヒシヒシと伝わってくるような体験を余儀なくされます。
人を信じることはもちろん大事ですが、信じていた人に裏切られる体験を幾度か重ねると、そうも言ってられません。
もしもこれがプライベートな領域なら個人的な被害ですみますが、事業経営の領域で起こると、そんな呑気なことも言ってられません。
組織のトップは、組織に所属する仲間たちの生活に大きな責任を負ってますから。
ここで韓非子の言葉を誤解してはならないのは、韓非子は決して「人を信じるな!」と言いたいわけではない、ということです。言うまでもなく、組織の中で信頼関係はとても大事です。
要するに、「人から裏切られる」ということを想定内に置いて組織運営を図れと言いたいわけです。
「裏切り」を想定内に置くのと置かないのとでは、天と地の開きがあります。
想定内に置けば、裏切りにくくなるような仕組みの構築にも取りかかれるし、仮に裏切られた場合の被害を最小化できるような事前の対策も立てられます。
想定内に置かなければ、裏切りが発覚した場合に、組織は右往左往し被害は拡大するばかりです。
この韓非子の言葉は、ボクが法律事務所の経営トップとして大事にしている言葉のひとつです。