弁護士になるためには、司法試験に合格するだけではだめで、司法修習課程を修了し、かつ、考査という試験(俗に2回試験と呼ばれています)に合格する必要があります。

 ボクは1993年の司法試験合格で修習期は48期ですが、ボクの同期は全員合格で2回試験に落ちた人はいませんでした。ボクが修習生だった時代は、原則全員合格で、不合格者が出る年でもせいぜい1人か2人。だから、落ちるとかなり恥ずかしかったんです。

 でも、新司法試験が始まってから、正確な数字は忘れましたが、50人以上が2回試験で落とされているようです。この2回試験不合格者の急増が、新司法試験の”質の低下”の有力なエビデンスとされることがあります。

 しかし、これは本当でしょうか?

 何年か前に、2回試験不合格者の答案例が新聞紙上で掲載されていたのを覚えている人もいるかと思います。あの記事を読んで、「最近の修習生は出来が悪いなあ」と感じた人もいるかもしれませんが、ボクは別の視点で考えました。

(裁判所は、法曹人口の激増をあまり歓迎していない…)

 あの新聞記事は、裁判所(司法研修所)が情報提供しないと書けないはずです。
 裁判所は、政治部門に属する権力機構ではないので、裁判所の関係者には政治的言論の自由や政治活動は許されていません。真正面から「法曹人口の激増反対」とは言えませんが、2回試験不合格者の答案を”事実”として紹介するだけにとどめれば、政治的言論にはなりにくい。

 翻って考えてみれば、法務省がどんなに合格者を増やしても、裁判所が2回試験で落としてしまえば、法曹人口の増加にブレーキをかけられます。司法試験は法務省の管轄ですが、2回試験は裁判所の管轄ですから。

 実際、この後、法務省は年間3000人合格を目指していたのにこれを放棄し、現在の年間合格者数は約2000人で推移しています。
 だからボクは、2回試験不合格者急増の背景に、法務省と裁判所の政治的駆け引きのようなものを感じ取ってしまうんです。


 もっとも、新司法試験で合格者の質が低下したから、2回試験不合格者も急増したのであれば、ボクの勘ぐりは的外れになります。法曹にしてはいけないレベルの人は不合格にするべきだからです。

 しかし、ボクの感想では、2回試験はボクらの時代よりもかなり難易化しています。

 実は、ボクの女房が新司法試験合格の62期で、女房のことも心配だったので、2回試験の内容を彼女から詳しく聴いたのですが、いやこれが難しいんですよ。

 女房から、「本当にあなたの時代って、こんな問題でもみんなちゃんと回答できたの?」と訊かれましたが、「いや~、その問題じゃオレの時代でも不合格者は確実にでそうだな…」と答えました。問題の内容は忘れましたが、女房から問題の内容を聴いた時のボクの率直な感想です。

 結論を言うと、”裁判所は昔と違って、2回試験で修習生を落とそうとしている”というのがボクの観測です。
 せっかく司法試験に合格し、修習課程も終えたのに、こんなところで足をすくわれるなんて、ちょっと可哀想だなと思います。

 でも、これが今の修習生が直面している現実です。

 そう言えば、もうすぐ2回試験ですね。

 65期の修習生のみなさん、落ちないように頑張ってくださいね。