最近、隣接士業間における職域の規制緩和の波も手伝って、他士業による非弁活動が増えてきたように感じます。それどころか、隣接士業ですらない、通常のビジネス・パーソンですら、弁護士まがいのビジネスに手を出し始めているのをインターネットで見かけます。
弁護士会には非弁取締委員会というのがあって、無資格者による非弁活動を由々しき問題だとしているのですが、世論は非弁を取り締まろうという空気になっていない…。なぜなのでしょうか?
そもそも、有資格者でないと業務を行うことが禁止されているのは弁護士だけではありません。
例えば医師。たまに、テレビのニュースなどで、医師免許を有さない者が医療行為に及んだとして逮捕された、なんて事件を見かけます。
本来、国が一定の職業に関し、有資格者のみにその専門業務に従事することを許しているのは、そうしないと利用者が被害を被るからです。確かに、医師免許を有しない人に手術してもらうのは恐いですよね。
少なくとも医療の現場では、無資格者による医療行為に対して、世論は厳しい態度を示します。このような違法な医療行為に怒りを表すのは世論であって医師ではない…。
ところが、非弁活動については、世論は冷めていて弁護士だけが怒っている…。だから業界エゴだなんて言われてしまう。
世論というのは、素人集団であるにもかかわらず、意外と鋭いと思います。
医療行為はさすがに医師にやってもらわないと困る。けれども、弁護士がやっている仕事の中には、他士業や無資格者がやっても大して変わりがないものがけっこうある。そういうことに気づき始めているんです。
新司法試験によって弁護士の質が低下したなんて議論もありますが、この議論のおかしさは、そもそもボクたち弁護士って、弁護士でないとできないような難しい仕事ばかりしてましたっけ?という素朴な疑問に気づいていない点です。行政書士が非弁をしても弊害がないのであれば、新司法試験の合格者が弁護士になったからといって、弊害が起こるとは思えません。
旧司法試験が必要性を越えて難しすぎただけで、ボクは基本的に新司法試験の合格水準で特に問題はないと思っています。
諸外国には、弁護士業務を法廷活動に限定している立法例がけっこうあります。
弁護士会は、非弁活動に対してあまり騒ぎ立てると、弁護士法72条を改正すべきだ、などという世論が形成されるのを恐れているんだと思います。だから、非弁を由々しき問題としていながら、取締自体は腰が引けているわけです。
弁護士激増の厳しい時代で、弁護士の専売特許がどんどん狭まっていく…。そんな時代がもうそこまで来ているような気がします。