確かに、新司法試験が始まって新人弁護士を採用してみると、変な人が増えたな、という印象を受けます。
しかし、新司法試験と関係があるのかは、もう少し掘り下げて分析してみる必要があると思います。
新司法試験で何が変わったのか…。おそらく、確実に言えることは、偏差値の低下だと思います。
当然ですが、合格者数が増えれば、偏差値は下がります。そして、
試験の難易度=受験生の質 × 競争率
で決まりますが、合格者数が増えると、競争率が下がるだけではなく、”受験生の質”も下がります。なぜなら、合格者500人時代では、501番で不合格となった人は翌年も受験しますが、2000人時代だと、上位2000人は受験界から去っているからです。実は、競争率の低下よりもこちらのインパクトのほうが大きいのではないか、とにらんでいます。
ボクの友人で、旧司法試験に3年連続総合Aで不合格になった人がいます。当時の総合Aは、上位1000番以内。うち、上位500人は合格しているので、総合Aの不合格者は501番~1000番までとなります。1000番以内には入れても、500番以内に入るのがいかに大変だったかがわかります。
しかし、問題は、ここから”弁護士の質の低下”を即座に導けるのかです。
確かに、法曹には高度の論理的思考力・分析力・文章力が要求されるので、司法試験が一応合理的な試験であるとするならば、一定の相関関係はあるはずです。
しかし、優秀な受験生=優秀な弁護士、と言えるほどの強い相関関係があるのかというと甚だ疑問です。なぜならば、うちの若い弁護士を見ていても、司法試験の成績と弁護士としての有能さとの間に強い相関関係を見いだせないからです。
むしろ、若い弁護士と仕事をしていて最近強く感じるのは、
1 すぐに弱音を吐き、忍耐力がない
2 自分の頭で考えようとしない
3 仕事が長続きせず、30代半ばを越えても自分探しをしている
という点に集約されます。要するに、メンタルに弱い人が増えていると感じるわけです。これは弁護士以前の問題です。
最近まで知らなかったのですが、うちの勤務弁護士から「弁護士本音トーク」というサイトが2ちゃんねるにあることを教えてもらい、読んでみて驚きました。とても弁護士が書き込んでいるとは思えない、明らかに”病んでいる”としか思えないような文章が書き込まれておりました。こんなものに近づいてはいけないな、と思いました。
でも、実は、この病は弁護士業界に限ったことではありません。
巷では、新型うつなどという、不思議な病気も出現し、メンタルヘルス・ビジネスが大流行…。日本全体が病んでいるんです。したがって、新司法試験による質の低下というよりは、現代の日本を取り巻いている、もっと深刻な社会病理だという気がします。
今、ボクたちは、そういう時代に直面している、ということを認識したほうがいい。そのうえで、クライアントの信頼を裏切らないように、いかに組織作りをしていくか、が法律事務所経営者の大きな課題になってくると思います。
しょせん、法律事務所は典型的な労働集約産業です。組織の強さは”人”で決まりますから。