1.はじめに

 皆様、こんにちは。
 今日は、追突事故等でよく問題となる、車間距離の保持について考えていきたいと思います。

 道路交通法上、車両は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならないとされています(道路交通法26条1項)。
 このように、車両等の追突回避及び前方見通しの不十分さを補うために、車両が直前車両等との間の車間距離の保持義務が法律上定められています。
 そして、追突事故等では、この車間距離保持義務の違反が問題にされることがあります。

2.「同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するとき」

 まず、「同一の進路」とは、先行車の進路と追従車の進路がその一部または全部の進路が重なり合っているものをいい、先行車と追従車の進路が全く別のときは「同一の進路」にはあたりません。
 そして、「他の車両等の直後を進行するとき」とは、追従車が同一の進路を走行している先行車のすぐ後を進行するときをいいます。
 このような場合に、車間距離の保持義務が生じることになります。

3.「その直前の車両等が急に停止したとき」

 「その直前の車両等が急に停止したとき」として分かりやすいのは、先行車がブレーキを踏んで急停止したときであると思います。
 先行車がブレーキを踏んで急停止したときは、運転手は、その先行車のブレーキランプ等の合図を見て、自車もブレーキを踏んで急停止しようとするので、先行車が急停止した時に、十分な車間距離をとっていれば、普通は、追突をすることなく停止措置や回避措置をとることが出来ます。

 では、先行車がブレーキを踏まずに急停止した場合、例えば、先行車が障害物に衝突して急停止した場合なども「急に停止したとき」に当てはまるのでしょうか。先行車が障害物に衝突して急停止した場合、先行車のブレーキランプが点灯していないことも考えられるので、運転手として、先行車が急停止したかどうかを認識するのが遅れてしまうことがあります。
 これについては、障害物に衝突して停止した場合も、一般的に起こりやすい事故形態であるとして、運転手にこのような事故形態もあることを予測させて必要な距離を保たせなければならないと考えられることから、先行車が障害物に衝突して急停止した場合なども「急に停止したとき」に当てはまるものと考えられています。

4.「追突するのを避けることができるため必要な距離」

 これについては、一応の参考となるものとして、乾燥した平坦舗装路面における速度と車間距離の基準を示した警視庁管内自動車交通の指示事項(例えば、速度50キロメートル毎時について車間距離は18m)というものがありますが、車両の種類や道路状況、積載量等の諸事情に応じて「必要な距離」が認定されることになります。

5.最後に

 車間距離をしっかりと保持することで、自身が先行車に追突する危険が減り、自分が交通事故の加害者となる事態も避けることができる可能性が高くなります。前方の道路状況を注視するとともに、車間距離にも気を付けていただければと思います。

(参考文献 野下文生原著 道路交通執務研修会編著 「執務資料道路交通法解説16訂版」)