こんにちは。今回はペットホテルの費用についてお話したいと思います。今日、ペット飼育可のマンションが増えてきていることもあり、単身者でペットを飼われている方も多いと思います。では、被害者が交通事故により入院を要する怪我を負ったため、被害者の飼育していたペットをホテル等に預けた場合、その費用は損害として認められるのでしょうか。

 まず、ペットホテルの費用を否定した裁判例としては、横浜地方裁判所平成24年2月27日判決があげられます。被害者は、事故により骨盤骨折、両下肢不全麻痺、左大腿骨顆部骨折、左下腿骨骨折、膀胱損傷、尿道損傷の傷害を負い、重い後遺障害が残りましたが、裁判所は「原告は1人暮らしではなく、家族の他の者による飼育が可能であり、必要性・相当性がないから、損害とは認められない。」と判断しています。

 また、横浜地方裁判所平成26年1月30日判決では、

「ペットの飼育は、加害者が予見することのできない事情であるから、本件事故との相当因果関係がない。」

とし、被害者が請求したペットシッター代を認めませんでした。

 一方、同居の家族がいたとしても、ペットホテルの費用を認定した裁判例もあります(大阪地裁平成20年9月8日判決)。妻は、事故により重傷を負った夫に付添い、泊まり込みで夫の看病をしていた事、夫婦には3人の幼子がおり、ペットの世話まで行うことが難しかった事などが考慮されたものと考えられます。

 ペットホテルの費用は、被害者の怪我の程度や単身者であるなど、やむを得ない事情があれば認められる可能性がありますが、実際に預けた期間よりも短縮した期間を認定した裁判例もあるため(東京地裁平成25年1月25日判決)、注意が必要です。