わが国では遺言について“こっそりと残しておくもの”というイメージがあります。そのため、遺言書の存在を遺言者の生前に知らされている人は少ないといえます。他方で、遺言書は、遺言者が故人となった後に発見されることがほとんどであり、遺言の内容や作成経緯について遺言者(故人)に問い質すことができない状態にあります。
そのため、実際に遺言書が発見された場合、遺言書によって相続分を減らされているなどの不利益を受ける法定相続人は、遺言の有効性について疑いを持つことが多いといえます。
遺言の有効性について疑いを持った人が当該遺言の有効性を争う手段の一つとして、遺言の無効確認訴訟という手続があります。
具体的には、遺言の有効性について疑いを持った法定相続人などが、遺言が無効となる原因を主張立証し、裁判所に遺言の無効を確認してもらうことになります。
遺言無効の原因は、発見された遺言が自筆証書遺言か公正証書遺言かによって異なります。
発見された遺言が自筆証書遺言である場合、①日付・押印などの様式の不備、②自書性の欠缺、③遺言能力等の事情等が主に問題となります。
他方、公正証書遺言の場合は、①遺言能力の有無、②口授の要件(公正証書遺言を作成する場合、遺言者は、遺言の趣旨を公証人に口授しなければならないところ(民法969条2号)、遺言者が病気等の理由により話をすることが困難となった場合に、口授の要件を欠くのではないかが問題となります)等が問題となります。
なお、自筆証書遺言と比べて、公正証書遺言は、無効と判断される可能性が少ないといえます。公正証書遺言の作成には法律に精通した公証人の立会いが必要とされており、そのために形式の不備等が生じる可能性が乏しく、遺言能力を明らかに欠く場合は口授の要件を満たすことが困難だからです。
遺言を作成しようとする場合は、せっかく作成した遺言が無効と判断されないように法律の様式を充たす必要があります。
他方で、法定相続人等として遺言を発見した場合は、当該遺言の効力を検討するべきです。
遺言を巡るトラブルは多いため、遺言に関してご不安をお持ちの場合は、弁護士に相談することをお勧めします。