A.
遺産分割協議は、いつでも行うことができます。
したがって、母親が他界し、10年経過していても、遺産分割協議は可能です。ただし、個々の遺産について取得時効(民法162条)が成立した場合には、遺産分割の対象外となることはあります。

 民法907条1項は、「共同相続人は・・・いつでも、その協議で、遺産分割をすることができる。」と規定しています。つまり、遺産分割手続は消滅時効にかかりません。

 もっとも、上で述べた通り、個々の遺産について取得時効(民法162条)が完成した場合には、時効取得者が当該遺産の所有権を取得するため、遺産分割の対象外となることがあります。
 本件では、母親が他界してから10年間、姉が遺産を管理しています。そうすると、姉が10年間の短期取得時効(民法162条2項)の要件を満たす場合には、遺産の所有権は姉が取得することになります。
 もっとも、本件では姉妹間で一度も遺産分割協議がなされていません。妹は、「母の面倒を見ていたのは姉ですし、その時はそれでもいいと思っていた」とのことですが、積極的に相続を放棄すると発言したわけでも、相続放棄と受け取られてもやむを得ない言動をしたわけでもありません。
 そうすると、姉が管理していた遺産について、自分の所有物であると信じたことについて無過失であるとの認定は、本件では難しいと思われます。

 よって、本件で取得時効は成立せず、遺産分割協議は可能です。