A.
ご質問にもあるとおり、夫婦は離婚すると配偶者でなくなるため、元夫の相続人ではなくなりますが(民法890条参照)、離婚しても親子の関係が終了するわけではないため、元夫の相続人であることに変わりありません(民法887条1項)。
質問者さんは、元夫が亡くなったことすら知らなかったとのことですから、息子さんが遺産分割協議に参加していなかったと思われます。
今回のように共同相続人の一人(今回は、息子さん)が欠けてなされた遺産分割協議は無効と考えられています。
そのため、息子さんは、相続人としての権利を主張することができるという結論になると思われます。

金銭しか貰えない?

 すでに述べたように、息子さんは、相続人として権利を主張することができます。それでは、どのように権利を主張できるでしょうか。

 これについて、金銭の請求権しかないという考え方があります。すなわち、遺産分割が終わってしまっているため、遺産分割の内容をひっくり返すことまでは適切ではないと考え、他の共同相続人に対して、相続分に相当する金銭の支払いのみを求めることができるという考え方です。
 しかし、金銭支払い請求のみできるというように限定する必要はないと思われ、実際、判例も金銭支払い請求に限定されないと考えているようです(最判昭和54年3月23日民集33巻2号294頁)。

第三者に財産が移転していた場合どうなる?

 遺産分割した財産が共同相続人のもとにある場合は、再度、遺産分割をし直すことで解決することができます。しかし、例えば、相続財産である動産・不動産等を既に売却してしまっている場合はどうすればよいでしょうか。
 これについては、遺産分割が無効である以上、遺産分割に基づいて共同相続人の一人(便宜上「A」としておきます。)がその動産・不動産等の所有権を取得していたとしても、それは無効となります。すなわち、Aは、相続分に応じて所有権の一部のみ有するにとどまり、相続分を超える部分については、Aは何らの権利も有しません。そのため、その部分については、動産・不動産等の売却も無効となります。

 したがって、A以外の共同相続人は、動産・不動産等の購入者から、自分の相続分について取り返せるということになります。ただし、場合によっては、取り戻せないこともありますので、注意が必要となります。

まとめ

 今回の場合、息子さんが遺産分割協議に参加していないことから遺産分割は無効となります。そのため、息子さんを交えた上で、再度、遺産分割をして、相続財産をどうするか決めることが必要になるか思います。また、動産・不動産等については、第三者に売られている場合、その第三者を相手にして、動産・不動産等を返してもらうように求めるということも考えられます。

 他の共同相続人が遺産分割に応じない場合や第三者が動産・不動産等の返還に応じない場合は、息子さんだけでお話し合いをすることは困難と思われます。場合によっては、訴訟等が必要となりますので、専門家に相談するのがよいかと思います。