2. 2つの考え方

 この点、遺産の評価の基準時について、2つの考え方があります。
 まず、分割するまでの遺産の評価額に変動があっても、遺産の評価は相続開始の時点とすべきであるとの考え方があります。これなら、基準時が、被相続人が亡くなったとき、と一律に決まりますから、わかりやすくて良いかもしれません。
 しかし、相続開始の時点とする考え方には、問題があります。それは、相続財産の評価額の変動は、不動産や株式など、各財産によって異なるので、相続開始の時点では同じ価値であっても、現実に遺産を分割するときには価値が異なる場合が多いことです。こうなると、遺産の配分割合は同じであっても、現実に取得できる価値が異なることになり、損をしてしまった相続人には不満が生じますから、またしても遺産分割で揉めることになりかねません。

 そうすると、遺産の評価の基準時は、遺産分割時とすることがよさそうです。分割時の値段で配分するので、各相続人においても不公平が生じませんし、仮に差額が出ても代わりに金銭を支払うといった調整が可能です。(他にも、民法等の条文に基づいた理由もありますが、細かいのでここでは割愛します。)

3. 遺産を評価する基準日はいつにするべき?

 最後に問題となるのが、具体的な基準日をいつにするかです。というのも、最終的に分割が確定する日は、分割内容の話合いをしている段階では将来の日ですから、将来の遺産の評価をすることはできません。そのため、裁判所の審判などでは、審理の終結時とされるようです。
 他にも、不動産の鑑定などを行い、評価額の調査をした場合に、鑑定時から長期間経過する、あるいは短期間であっても評価額が大きく変動した場合には、評価の修正や、場合によっては再鑑定の必要が出てくることもあります。

4. まとめ

 相続の場面では、亡くなった方のご家族等の様々な思いや思惑が交錯しますから、いろいろと揉め事が生じることも多くなりがちです。そのため、できるだけ公平なルールに基づいて遺産分割を進めることが重要です。
 もし、相続について疑問や不安な点等がございましたら、一度弁護士にご相談ください。解決への道筋が見えてくるでしょう。