子どもを持つ親になると、自分たちのこと以外に子育てについても気を回さなければならず、なかなか大変な思いをすることが多いでしょう。子育ての苦労といえば、養育のためのお金のやりくりや、子の進路についての悩みなどが良く思い浮かぶかと思います。
しかし、それと同様に気に掛けなければならないことが、子どもが何か悪さをして、他人に迷惑をかけた場合のことです。
自身の故意・過失が原因で他人に損害を与えたときには、その損害を賠償しなければなりません(民法709条)。しかし、まだ物事の是非をわきまえてもいない小さな子どもが悪戯をして他人に迷惑をかけても、責任能力がないとされるため、その責任を問うことはできません(民法712条)。このような場合には、監督者である親が子に代わって責任を負うこととなります(民法714条)。
子に責任能力が備わるとみなされる時期は、大体11歳から13歳くらいまでの間で個別に判断されているようですが、いずれにしても子が小さいうちは、親は子の振る舞いが他人の迷惑とならないように、重々注意するべきであると言えます。「小さな子どものすることですし、そんなに目くじらを立てないでください。」という言葉はまあもっともですが、その代わり「では、親であるあなたが責任を持ってください。」ということになりますので。
さて、子どもがもう16歳くらいになり、物事の是非をわきまえて責任を負う年頃になれば、親は子の行ないの結果に責任を持たずともよくなるのでしょうか。以前は、そのように判断されることもあったようです。しかし、理屈は責任を負うとしても、実際に子どもが資力を備えることはほとんどなく、被害者に不利な結果となることが多くありました。
その後、この点については、「監督義務者の監督義務違反と、子どもの不法行為結果との間に相当因果関係が認められる場合には、監督義務者自身に民法709条の不法行為責任が成立する」こととされました(最判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁)。この場合、直接の加害者本人は十分に物事の是非が判断できる子どもであることを念頭に、どのような点について親の監督義務を指摘し、結果との間のつながりを見出すかに被害者側の工夫が必要となります。しかし、「ウチの子はもういい年だし、私に何か責任を求められても困る。」と簡単にいえないということでもあります。 他人の子どもに迷惑をかけられた側である場合も、考え方は同じです。
もっとも、子どもに対する親の責任は、基本的には子どもが未成年者のうちのことです。上記判例も、未成年者の子どものケースです。さすがに子どもが成人となった後は、その子自身が自分の言動に責任を持ち、責任を果たすこととなります。
成人となった子が何らかの不始末をしでかしたとして(例えば窃盗未遂?)、そのことを理由として親の法的責任を問うことは、基本的にできません。道義的、社会的責任はまた別でしょうが。