Q.
会社の方針では基本的に残業代は支払われないと話を聞いて入社しました。
ですが、一日の労働時間ではとてもではないですが終わる見込みのない作業量を依頼されています。
ノルマもあるため、どうしても残業をしないといけない状況ですが、会社は自分の能力不足のせいだから残業代は出せないと言い、払う様子がありません。残業しているのは私だけでなく、同期の約7割が同じ状況です。
なんとか残業代を支払ってもらえないでしょうか?
A.
残業代は、当然1分単位で支払われなければなりません。労働者の能力不足で時間がかかるということは、残業代を支払わない理由になりません。したがって、質問者様が実際に残業をされているとのことであれば、残業代は請求することができます。
ただし、残業代の請求については2年の消滅時効がありますので、請求の時期については注意が必要です。

残業代の算出方法

 具体的な残業代の算出方法は、以下の通りです。
 すなわち、

①所定賃金(例えば、月給制の場合、月給額(ただし、時間外労働等の割増賃金分は除きます。))を、月の所定労働時間で割って1時間当たりの単価を算出
②1時間当たりの単価に、時間外労働時間を乗じて、必要に応じて労働基準法に基づく割増率を掛け合わせる

 これらの計算結果が具体的に請求することができる残業代となります。

管理監督者は残業代を請求できない?

 労働基準法においては「管理又は監督の地位にある者」(管理監督者)には同法の残業代の規定は適用されません。そのため、自分は会社内での役職から残業代を請求できないものと考える方がおられるかもしれません。

 しかし、管理監督者に該当するか否かは、肩書等の形式的な事情ではなく、個別の実態に応じて、①労務管理上使用者と一体に考えられるか、②労務時間管理を受けていないか否か、③基本給等においてその地位にふさわしい待遇を受けているか等の事情から判断されることになります。裁判例においては、例えばハンバーガー店の店長について「管理監督者」にはあたらないとしたものなどがあります。

「みなし残業制度」でも残業代は請求できる?

 次に「みなし残業制度」を導入している企業においてはどう処理されるでしょうか。同制度は一般的に賃金や手当ての中に、あらかじめ一定時間分の残業代を含ませておくというものです。そうすると、どれだけ残業しても別途残業代は請求できないのではないかと思う方もおられるでしょう。

 しかし、このような制度を採用している企業であっても、支払われるべき残業代が、固定の支給額を超過した場合には超過分については残業代を請求できることになります。

残業代の請求に必要な資料について

 残業代の請求にあたっては、所定賃金と実働労働時間が確認できる資料が必要となります。所定賃金については、給与明細等で確認が可能です。実働労働時間については、本来使用者側で労働時間を把握しているはずですが、必ずしも守られているとは限りません。そのため、タイムカード等の記録から実労働時間を算出することになります。