長引く不況の影響が残っている昨今、現状のままでは経営も厳しく、人材確保や経営規模の面で苦境に置かれている企業も多く存在しています。そのような中で、打開策として、企業同士が合併したり、あるいはいくつかの企業を買収して傘下に置いたりして、企業体制や競争力を強化しようとする動き、いわゆるM&Aを行う企業も多くなってきています。

 M&Aを行うメリットとしては、売手企業の物的資源や人材等、既存経営資源を活用することが可能となり、市場内における競争力が増す点にあると思われます。

 では、M&Aを実施するためには、どのような手続きを踏む必要があるのでしょうか。

 最初の手続であり最も重要な手続きは、対象となる企業探しです。

 経営者等の個人的関係から対象が見つかることや、ほとんどつながりのない企業を買収する敵対的買収等もありますが、多くはメインバンクやM&Aのコーディネーター企業からの紹介により見つかります。

 中小企業においては、対象企業をうまく見つけられない例が多く、経営破たん等に陥っている例が見られることから、コーディネーター等をうまく利用することが重要です。

 対象企業が見つかると、次に検討すべきは、方法の確定と、対象企業がどのような企業であるのかを正確に把握することです。

 M&Aの方法としては、既存会社に吸収合併等を行う方法、新設会社を作って当該会社にいくつかの会社を合併等させる方法、対象企業を子会社等にする方法、事業の一部等を譲渡・分割する方法等、多種多様な方法が考えられます。

 いかなる方法をとるかについてはメリット・デメリットがあり、場合に応じた適切な方法を検討することは、高度に専門的な問題であることから、法律を熟知した弁護士等の専門家による関与が欠かせません。

 M&Aの対象企業・方法が概ね確定したところで、次に行われるのは、対象企業がどのような企業であるのかを正確に把握することであり、その際に行われる調査を「デュー・デリジェンス(略称としてDD)」と呼びます。

 DDもさらに分野が分かれており、弁護士が関与する法務DD、公認会計士等が財務関係を調査する財務DD等があります。法務DDにおいては、対象企業がいかなる法的問題を抱えているのか、正確に把握すべく対象に内部資料の提出を求めたり、実際に対象企業に調査に赴いたりして、対象企業に内在するリスクを探ります。

 以上のように、M&Aは企業の存続及び発展のためには重要な選択肢の一つとなり得るため、経営の可能性を探るためにも、まずは各種専門家に相談しながら、様々な手法を検討すべきものと思われます。