皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
今回は、消費者契約法(以下「法」といいます。)のうち、消費者の損害賠償責任を予定する条項の無効(法9条)について説明します。
消費者の損害賠償責任を予定する条項とは、例えば、消費者が途中で契約解除をした場合には、消費者は事業者に対し、違約金として金10万円を支払うというような内容の条項です。
事業者の側としては、例えば契約内容の実現のために準備行為を行っていたところ、急に消費者から契約をキャンセルされては、それまでの準備行為に費やした労力や費用が無駄になってしまいます。消費者の損害賠償責任を予定する条項は、このようなリスクを補填することが可能な条項です。
他方で、あまりにも高額な違約金を設定しては、消費者に不当な損害を被らせることになってしまいます。
このような利害対立を考慮した上で設けられたのが法9条であり、内容はおおまかに説明すると以下のようになっています。
① 契約の解除(キャンセル等)に伴う違約金等を定めた条項については、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分を無効とする
② 消費者が契約に基づく支払期日までにお金を支払わない場合における損害賠償の額等を定めた条項(いわゆる遅延損害金を定めた条項です)については、年14.6%を超える部分は無効とする
条文の特徴としては、条項のうち不当と考えられる部分のみを無効とする旨規定しており、違約金条項等すべてを無効とするものではないことが挙げられます。前述した、事業者側の利益も考慮した結果といえるでしょう。
条文の内容を見ると、②は比較的わかりやすいのではないかと思いますが、①についてはピンと来ない方も多いかもしれません。簡単に言うと、「その事業者がその時期、その理由でキャンセルされた場合に生じる損害の平均額の支払いを求める部分までは有効」という内容です。契約数が多い種類の契約であれば平均額の算出はそこまで難しくはないかもしれませんが、新しい種類の契約で前例が少ないものになると、立証には労力を要するかもしれません。
もちろん、事業者としては違約金を多く取れた方がリスクの補填という面からは望ましいですが、このような条文が存在する以上、下手に高額な違約金を設定しては、消費者との間でトラブルにつながり、訴訟沙汰にまで至ってしまう可能性があります。そうなると、訴訟の費用と時間がかかってしまうばかりか、事業者の評判、ひいては売上が落ちるという事態にもつながりかねません。こういった事態を避けるためにも、違約金額の設定には慎重になられることをお勧め致します。
次回は、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(法10条)についてお話します。