皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
 今回は、国際訴訟競合と呼ばれる問題についてお話しようと思います。

 国際訴訟競合とは、同一事件につき、日本と外国双方の裁判所で訴訟が提起された場合に、日本国内の事件をどのように処理すべきかという問題です。

 もしこのような事態になってしまった場合は、いくつか問題が生じますが、その中でも特に大きなものは2つあげられます。
 まず、当事者の負担が非常に大きくなるという問題です。当事者からすれば、外国人や外国の会社を相手にするだけでも大変です。これに加えて、さらに相手方の国の裁判所での裁判手続にも応じなければならないということになれば、その負担はますます大きなものになります。
 次に、矛盾した判決が下される可能性があるという問題です。日本の裁判所と外国の裁判所では、考え方や当該事件に適用する法律が異なる可能性もあります。また、例えば日本の裁判所では証人尋問がうまくいって勝訴したが、外国の裁判所では証人尋問に失敗してその結果敗訴した、といった事態に陥ることも考えられます。この場合には、当該外国の判決の効力が日本国内においても認められるかという問題はありますが、もし認められれば、日本国内においては、同一事件につき矛盾した2つの判決が存在することになっていまいます。こうなってしまった場合に、どちらの判決の効力を認めるべきかは、難しい問題です。

 この問題に関してどのように解決すべきかは裁判例上明確でなく、学説においても通説というものが存在しない状況です。学説上は、①将来、当該外国で下される判決が日本国内で効力を生じることが予測される場合には日本国内での訴訟を却下すべきとする説、②外国と日本の裁判所、どちらの裁判所が当該事件の法廷地として適切であるかを、様々な事情を考慮して決定すべきとする説等があります。しかし、①は、将来の予測が困難であるため日本国内での訴訟却下が必ずしも妥当な判断であると判断できない点、②は基準として不明確であるという点が批判されており、どちらも決定的なものではありません。

 この問題に対する対応策としては、裁判例上も不明確である以上はっきりしたことは申し上げられませんが、上記①及び②の視点は、どの国の裁判所であっても考慮が必要な視点ではないかと思いますので、いずれの視点からも主張をして、日本国内で訴訟を行うべき、あるいは外国での訴訟は却下されるべき、といった主張をしていかざるを得ないかと思います。

 もしまたこの点に関する新しい裁判例等が下されるようであれば、またその際には等ブログで紹介したいと思います。