こんにちは。今回は、製造物責任法についてお話ししたいと思います。
製造物責任法は、平成6年に成立した法律です。みなさんには、PL法と言った方がなじみ深いかもしれません。
製造物責任法は、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合」に適用されます(製造物責任法1条)。製造物の欠陥自体は、民法上の債務不履行責任や瑕疵担保責任を問えば良いのですが、製造物責任法は、製造物の欠陥に留まらず、生命に対する被害等、拡大損害が生じた場合を想定していることになります。
製造物責任法は、製造業者などの故意・過失を要件としておらず(製造物責任法3条)、製造業者にとっては非常に重たい法律となっています。
製造物とは、「製造又は加工された動産」(製造物責任法2条1項)を言います。この定義からすると、不動産も未加工の農林水産物も製造物には該当しないことになります。つまり、例えば、建売住宅に欠陥があり、居住者に健康被害が生じたとしても、不動産である住宅は製造物ではないため、居住者は建築業者に過失がなければ責任を問えないことになります。また、養豚場で有害物質に汚染された飼料を与えられた豚肉を食べた消費者が中毒症状を引き起こしても、豚肉は製造物ではないため、消費者は養豚業者に対して製造物責任を問えないことになります。
世界各国の製造物責任法を見ると、製造物の範囲には幅があり、不動産、未加工農林水産物のみならず無体的な電気やエネルギーを含む国もあります。日本でも、製造物責任法を設けるにあたり、未加工農林水産物を責任対象から外すことに強い反対がありました。
確かに、農業や養殖場において、購入した苗や稚魚に化学肥料や殺虫剤などの化学薬品を用いて生産していることを想像すると、製造や加工との違いが希薄になっているようにも思われます。また、遺伝子操作等、科学技術の発展に伴い、未加工農林水産物であっても生命などに重大な影響を及ぼす事態が生じる危険性はあり、一般の動産と比べてもその危険性は低いものとは言えないかもしれません。とすれば、未加工農林水産物の生産者に製造物責任という厳格な責任を負わせなかったのは、政策的な判断がなされたものともいえそうです。
なお、養豚業者は製造物責任を負いませんが、豚肉を加工するソーセージ製造業者は製造物責任を負います。