建設工事には、注文者や元請負人、下請負人や建築士、行政機関など、多くの関係者が存在します。また、建設工事自体が専門的な知識、技術を用いるものであり、素人の注文主と専門家の請負人との間のように、理解の格差が存在する関係があります。元請と下請けなど、立場上の力関係も存在します。建設の現場はある種火薬庫のようなものともいえ、「容易に紛争は生じるが、容易に紛争は解決しない。」場合も多いと思われます。
 とはいえ、一度トラブルが生じたなら、それを放置するわけにはいきません。当事者間で協議の上解決できるならともかく、そうでないなら何らかの手段を用いてことを納めなければならなくなります。
 今回は、建築紛争の紛争処理手続きに触れようと思います。

 紛争を解決するために、裁判所での手続き、つまり訴訟や調停を行うことができます。訴訟なら裁判官による判断で紛争を終わらせることとなり、調停は調停委員の関与の下双方の協議で紛争の解決を図ります。双方の対立が深刻で、当事者のみでは歩み寄りが期待できないなら裁判を行う方が良いでしょうが、当事者のみでも第三者の仲介があれば歩み寄れる可能性があり、むしろ将来に禍根を残したくない場合には調停の方が良いと思われます。尚、訴訟を提起しても、裁判所により調停に付される場合もあります(民事調停法20条)。
 なお、建築紛争裁判は、高度に専門的な知識や経験がなければ適正な判断を下しにくいからなのか、訴訟において鑑定を行わせて(あるいは私的鑑定書を証拠として)、その内容を裁判官が参考にすることもあるようです。

 注文主と請負人との間や、元請と下請けとの間の紛争を裁判所を辻解決するなら、上記2のような手続によることとなります。
 しかし、建築に関し行政庁の関与があり、その処分や不作為を争うのであれば、行政事件の解決の枠組みによることとなります。取消訴訟や無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟や義務付け訴訟の提起です。もっとも、建築紛争については、建築基準法で審査請求前置主義が採られていることに注意が必要です(建築基準法96条)。訴訟以外では、異議申立てや審査請求をとることもできます。

 以上で述べたほか、建築紛争には種々の紛争解決の枠組みがあります。次回は、それらのうちいくつかについて書いていこうと思います。