年俸制と聞くと、多くの人はプロ野球選手のような方を想像することと思います。
 近年は、一般の会社でも、「年俸制」を導入しましたという声をよく聞くようになりました。しかし私は、会社における「年俸制」の導入について、違和感を抱かざるをえません。

 年俸制を導入するメリットとしては、一般的には、年功序列賃金体系から成果主義賃金体系に移行し、成果を上げることのできる従業員に対し、ダイレクトにその成果を評価し賃金に反映させられることだと言われています。
 しかし年俸制を導入した会社の方に、なぜ「年俸制」を導入したかを聞くと、殆どの方は明確な答えが返ってこないような気がします。
 もっとも、年俸制を導入し成果主義に移行したいと回答した方に対しても、加えて「御社では成果に対する明確な評価方法等が導入されているのか」と質問すると、口ごもってしまう方が多くいるというのが現状である気がします。

 では、なぜ年俸制を導入する会社が増えてきたのでしょうか。
 法律的知識があるのかないのかを別にして「年俸制を導入したら、残業代を支払わなくてもいいから」というのが、多くの方の内心の本音かも知れません。
 私も、会社経営陣の方から、自信満々の顔つきで残業代節約のためという回答を聞くことがあります。
 このような回答があった場合、私は、しっぺ返しを受けないように、「従業員に無駄な残業をさせない努力はしなければいけませんよ」と示唆するようにしています。
 しかしながら、一方で労働者の方と話をしていると「(非常ににこやかな笑顔で)うちの会社は年俸制やから、残業代は支払われへんねん。サービス残業ばっかりや。」てことを(何の疑問もなく)愚痴っているのもよく聞きます。
 平和ですねぇ。

 では、本当に年俸制を導入した場合、会社は従業員に残業代を支払う必要はないのでしょうか。
 法律的な答えは「NO」です。
 たとえ、年俸制を導入しても、法律上、残業代は従業員に支払わなければなりません。

 誤解を恐れずに述べるのであれば、従業員に残業代を支払わなくてもよいのは、
① みなし労働時間制が採用(裁量労働制を含む)された労働者
② 管理職等、労働基準法41条に該当する労働者
に対してのみです。

 残業代を支払わないでよい方法は、上記①②のものに限られます(但し、会社としては、労働環境や就業規則を整備し工夫することにより、残業代を抑えることは可能です(この工夫の仕方については後のブログにまとめる予定です))。

 年俸制移行後、従業員の残業の管理が甘くなっていると思われる方等、心当たりがあれば一度見つめなおす必要があるかと思います。