前回は、共有者の一人が共有物を単独で占有する場合、他の共有者は損害賠償等の請求ができることを説明しました。
 (前回の記事はこちら:共有物と賃貸借3

 今回取り上げるテーマは、前回のテーマのように共有者の一人が共有物を単独で占有し、他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合、他の共有者は変更の禁止及び原状回復の請求ができないかということです。

 民法249条より、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。前々回、共有者の一人による共有物の使用権原は、その者が共有物を単独占有しているからと言って否定されることはなく、他の共有者がその者に対して共有物の明渡しを求めることは、特段の事情がなければ認められないことを説明しました。
 とすれば、共有者の一人が共有物の現状に変更を加えている場合にも、単独使用されている場合と同様に、使用権原を認めた上で、共有物に変更を加える行為の全部の禁止をすることはできないのでしょうか。

 しかし、最高裁は、平成10年3月24日の判決において、共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合には、他の共有者は特段の事情がない限り、変更により生じた結果を除去して共有物を現状に服させることを求めることができる旨を判示しました(判タ974号92頁)。
 同判決は、共有物に変更を加える行為の全部の禁止を求めることができるとしたばかりでなく、共有物の原状回復を求めることもできると判示したのです。
 共有物の単独占有のケースとの違いは、民法251条より共有物の変更には他の共有者の同意が必要とされていることに加え、共有物の変更に対し禁止と原状回復を認めることは現に共有物を占有する共有者の使用を全面的には排除しないからかもしれません。

 共有物を賃貸に供し、あるいは供しようとしているが、他の共有者が共有物に変更を加えているため賃貸目的物としての価値に影響が出ている場合には、当該共有者に共有物の変更の禁止を求め、原状回復を請求することが可能と考えられます。