分譲マンションの居住者が管理費や修繕積立金などの支払いを滞納した場合、滞納を解消するもっとも強力な手段は、その居住者にマンションから出て行ってもらうことです。

 でも、マンションの居住者は、自分の専有部分の所有権(正確には「区分所有権」といいます)を持っているのに、管理組合などの第三者がそんなことできるの?って思いませんか。

 実は、「建物の区分所有等に関する法律」(以下「区分所有法」といいます)という法律で、一定の要件を満たせば、管理組合などがその区分所有権を競売請求することができることを規定しているのです。

 これを「区分所有権の競売請求」(区分所有法59条)といいます。

 この請求は、区分所有者間の共同の利益に反する行為(例えば、居住者の一人が他の居住者の迷惑となる動物を飼ったり、騒音や悪臭を発したりする行為)をし、それが著しく他の居住者の迷惑となる場合に、その居住者の区分所有権をはく奪し、区分所有関係から終局的に排除することを目的とするものです。

 このようにこの請求は居住者にかなりの不利益を与える手段ということになるので、認められるための要件も、以下のとおり厳格なものとなっています。

① 共同利益違反行為(区分所有法6条1項)による区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと

② 他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること

③ 管理組合などの集会の決議に基づいて訴えを提起すること

 この厳格な要件の中でも、特に、②の「他の方法によって」という要件は、裁判例においてもかなり厳格に判断されています。(東京地裁平成18年6月27日判決)。

 次回は、この裁判例について詳しく紹介したいと思います。

弁護士 竹若暢彦