前回は、不動産売買における仲介業者の役割について説明しましたので、今回は、不動産賃貸における仲介業者の役割について、説明しようと思います。
不動産賃貸における仲介業者の役割についても、重要事項説明に沿って考えることが分かりやすいと考えられます(但し、重要事項説明が全てではありません)。
説明の対象は大まかに言ってしまえば3点です。賃貸借契約の当事者である、①賃貸人及び②賃借人、そして、賃貸借契約の目的物である③賃貸物件についてです。
賃貸人について
賃貸人に関する調査として重要なことは、依頼を受けた賃貸人が目的物件を賃貸する権限を有しているかどうかを確認することです。
不動産賃貸の仲介業者のほとんどは、賃貸借の目的物件の所有者である賃貸人からの依頼を受けて、賃借人を探すことになると思われます。所有者が賃貸に出したい場合は、登記簿謄本等で所有権を有していることを確認した上で、本人確認をしっかりとしておくことで対処できるでしょう。ただし、登記簿謄本は、必ずしも事実を反映していない場合もありますので過信は禁物です。
注意が必要であるのは、目的物件に担保権が付いている場合や目的物件の所有者以外が賃貸人となるという場合です。
まず、担保権が付いている目的物件を賃借させる場合は、担保権が実行された場合、所有者の変更に伴い賃貸人の地位が移転する可能性があり、賃借人としても、賃借権を対抗できないこともありますので、担保権設定の時期や内容について、登記簿謄本等を確認しておく必要があります。
また、目的物件の所有者以外が賃貸人となる例もあり得ます。例えば、サブリースなどの場合は、所有者と賃貸人が異なることになりますが、賃貸人がしっかりと所有者から転貸の承諾を得ているのか否か確認しておくべきでしょう。
賃貸人の権限は賃貸借契約の締結の根幹に関わる重要な要素ですので、しっかりと調査しておく必要があります。万が一、調査不足であった場合は、仲介業者に対して法的責任が生じる可能性があります。
次回は、説明の対象として、②賃借人及び③目的物件について、説明したいと思います。