弁護士 長谷川 桃

 こんにちは。長谷川です。

今日から、下請法についてざっくりとしたお話をしようと思います。

 

下請法とは、下請け業者が取引上弱い立場に立たされやすいことに鑑み、下請け取引の公正化を図ると共に、下請け事業者の利益保護を目指した法律です。

下請け取引においては、下請け業者は「仕事を貰っているのだから・・・」「仕事を切られたら困る」といった不安を持つことが普通です。

そのため、どうしても、親事業者から無理なお願いや取引内容を強いられても、拒否したり強い態度で交渉に臨むと言ったことが極めてしずらい環境にあります。

「これでも仕事がなくなるよりはマシだ・・・」という下請け業者のあきらめと受容から、「無理が通れば道理が引っ込む」という状況に陥ってしまうわけです。

そこでそういった状況を回避し、下請け取引を公正化しようということで、下請法は、親事業者に対して4つの義務と11の禁止事項を規定しています。順次説明していきますね。

 

1 書面の交付義務(下請法3条)

親事業者は、発注にあたって、発注内容に関する具体的記載事項を全て記載した書面を交付する義務があります(但し、事前に下請代金が算定できないといったような場合には、算定方法を記載することができます)。

「最初から口頭で仕事の依頼が来ていて、契約書や発注書は作成したことがない」ということで、口頭で事業の発注を受けて仕事をしている中小企業さんって結構少なくありませんよね。(あくまで私の印象に過ぎませんが、特にデザイン会社さん等は、口頭ベースの仕事のやりとりが多いように思います。)

確かに、頻繁に取引している業者同士だとその都度契約書や発注内容を記載した書面を作成するって煩雑ですし、取引がうまくいっているときには、問題も生じていないのだから書面は不要ではないか、むしろ無い方が仕事がスピーディに進むだろうということはあると思います。

しかし、いざトラブルが起きたら、書面が何もないということで、下請業者自身の救済が非常に困難になります。(特に、訴訟をせざるを得ないような深刻な合には、悲惨です。裁判所は、証拠≒書面がないと、請求を認めてくれないことが通常ですから。個人的には「1つの真実より10の書面」だと思っているくらいです。)

契約の履行を迫ろうとしても、そもそも契約内容が明確でないことから、結局は「こういった発注だった」「いや、違う」という水掛け論になってしまいます。

だから発注内容を書面できち んと記載しておくということは、非常に重要なわけです。

 

ただ、これまで口頭ベースで仕事の発注を受けていたのに、突然「書面で下さい」とは、下請業者からは言いづらいですよね。「何だか親事業者を信用していないかのようで気分を害してしまうのではないか」「最悪の場合は、面倒くさいところだということで仕事を切られてしまうのではないか」等と不安になってしまいますから。

そこで、下請法では、発注書面の交付を義務づけたわけです。

下請業者の立場からも「法律に決まっているということで、うちの弁護士から、『守らなきゃダメだ』と言われた」「きちんと書面を貰っていないと、親事業者さんのコンプライアンス違反ということで、親事業者さんに迷惑をかけかねないとも言われた」等と、書面交付を頼みやすくなるわけです。

 

なお発注書面には、

(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号、記号等による記載も可)

(2) 製造委託、修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日

(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう明確に記載する。)

(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日又は期間)

(5) 下請事業者の給付を受領する場所

(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日

(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが、算定方法による記載も可)

(8) 下請代金の支払期日

(9) 手形を交付する場合は、手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期

(10) 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名,貸付け又は支払可能額、親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日

(11) 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日

(12) 原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡期日、決済期日、決済方法

等を記載することとなっていますので、ご確認下さい。

 

発注書面交付義務だけで、随分と長くなってしまいました。そこで、下請法の他の義務については、次回、お話ししようと思います。

また再来週。。。

 

おしまい。