3 結局は、経営者のモラル意識の問題
現代社会の法律関係は複雑で多岐に渡ります。確かに、弁護士から助言をもらわないと、どこに落とし穴があるかわかりません。その意味では、弁護士としてお手伝いできることは少なくないと感じています。
でも、そもそも成立しないビジネスモデルについては、弁護士がお役に立てることはほとんどありません。
なぜかというと、この手の問題は、経営者の方も承知していて、弁護士に相談してこないからです。
どうして相談しないのかというと、弁護士からもらう回答は初めから目に見えているからです。
マルチ商法で、当該商材をそもそも必要としていない人に、「他人に売却すればボーナスがもらえる」という理由で売りつけようとすれば、どうしたって無理な勧誘に走らざるを得ません。法律上問題があることくらい、専門家でなくても分かることなんです。だから、弁護士に聴くだけ野暮なんですね。「やめた方がいいですよ」と言われるのが関の山ですから。
通常、私たち弁護士の業務でこの手のご相談は、ほとんどありません。
そうすると、このようなビジネスに走るか否かは、結局、その会社の経営者のモラル意識に帰着するんです。
その意味では、法律問題ではないんですね。
今、コンプライアンス経営で最も重要なことは、優秀な弁護士をブレインにすることよりも、まず経営者の意識改革ではないでしょうか。