1 コンプライアンス
コンプライアンスという言葉が使われるようになってすでに久しいですが、この言葉は、私が弁護士になった約13年前にはありませんでした。
もっとも、日本語に訳すと、「法令遵守」という意味にすぎませんので、考えてみれば当たり前のこと。法律を遵守しなければいけないことは、私が弁護士になった当時も当然で、もっと言うと、昔から当然ですよね。江戸時代だってそうだったと思いますよ(笑)。私は日本の法制史についてはよく知りませんが、江戸時代なんかよりもはるか昔から、法律は遵守されるべきものだったはずです。
それなのに、突然、コンプライアンスという言葉が使われ始めたのは、ご承知のとおり、日本の大企業の不祥事が相次いだからですよね。
でも不思議ですよね。法令遵守なんて、内容的には何も新しいものなんかないのに、カタカナで突然登場すると、何か新しいもののように聞こえてきます。
さて、弁護士が本来コンプライアンスの分野でクライアント企業のためにお手伝いできることは、ビジネスモデルの具体的スキームの内容に法律問題が潜んでいないかを精査し、潜んでいた場合にそれどのように修正して法律問題をクリアーするか、それをご提案することです。
しかし、弁護士でもお手伝いできないコンプライアンス問題があります。
それは、ビジネスモデルの具体的スキームの中身にコンプライアンス違反が潜んでいるケースではなく、そもそもビジネスモデル自体がコンプライアンスに抵触する場合です。