こんにちは、弁護士の前田です。
 今日は、債権回収のうち、保険解約返戻金請求権を差し押さえる場合について、お話しします。

 まず、保険解約返戻金請求権の差押えは、債務者が保険会社に対して有する「債権」の差押えです。債権差押命令の効果は、

①債務者に対し処分を禁止する効果
②第三債務者(保険会社)に対し債務者への弁済を禁止する効果

 があります。

 そのため、差押債権を、債務者及び第三債務者が他の債権と識別できる必要があります。また、執行裁判所は差押債権が差押禁止債権にあたるのか、超過差押えにならないか等の判断をする必要があります。
 そこで、差押債権を特定しなければなりません。
 特定できていないとされた場合、債権差押命令の申立ては不適法として却下されます。

 では、保険解約返戻金請求権はどのようにして特定するのでしょうか。

 保険証券番号・契約日・保険の種類・保険期間・保険契約者・被保険者

くらいまでは最低限特定できると良いと思います。

 また、最高裁平成11年9月9日(民集53巻7号1173頁)は、

「生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができる。」

と判示していることも付言します。

弁護士 前田瑞穂