1 非公開株式会社の設立

 それでは、今回は、タイで非公開会社を設立する場合の手順・流れについて書きたいと思います。
 基本的な流れは、次の通りです。

 商号の予約→基本定款の作成・登記→創立総会の開催→会社登記

2 商号の予約について

 タイでは、全国を対象に、同一又は類似の商号が発生しないように管理しています。
 したがって、会社を設立しようとする者は、まず自分が希望する会社の商号をいくつか予約することになっています。
 但し、注意しなければならない点があります。予約から30日以内に基本定款の登記が完了しないと無効になってしまいます。いつまでも予約した商号を独占しておくのは、他の会社設立予定者に不利益だからです。
 したがって、商号予約後に速やかに基本定款の登記ができるように、予め基本定款の作成から取りかかっておいたほうがいいと思います。
 もっとも、この30日という期間は延長申請が可能です。

3 創立総会について

 タイで非公開株式会社を設立する場合には、最低3人の発起人が必要です。この発起人は自然人でなければなりません。
 発起人及び他の出資者の株式引き受けが決まったら、創立総会を開催します。創立総会で決議すべき事項は、以下の通りです。

  • 付属定款の採択
  • 発起人が支払った設立費用の承認
  • 発起人に対して支払がなされる場合、その額の承認
  • 優先株が発行される場合、その数、優先権の内容の決定
  • 金銭以外の方法による払込みに対して発行される株式の種類、株式数、払込額等の決定
  • 取締役、会計監査人の選任及びその権限の決定

 なお、タイでは、いわゆる業務監査を行う監査役を置く必要はありませんが、日本と異なり、会計監査人(公認会計士)を選任することが義務づけられています。要するに、会計監査人が会社の必要的機関になっているわけです。したがって、顧問弁護士は必ずしも必要ありませんが(笑)、公認会計士を1人確保しておく必要があります。

4 会社登記

 以前も書きましたが、タイでは日本のような授権資本制度は採用されていませんが、引き受けた株式の25%を支払わないと、会社の設立ができません。したがって、25%の支払は速やかに済ませられるように準備しておいてください。
 なお、2008年3月の改正法で、次の要件を満たせば、基本定款と会社の設立登記を同時にできるようになりました。

  • 株式引受人が揃っていること。
  • 創立総会で全議題が承認済みであること
  • 取締役が就任し、会社の事務を発起人から引き継いでいること。
  • 株式の払込が完了していること。

 決して難しいハードルではありませんよね。通常ならば、全てクリアーできるはずです。

5 タイ人の名義借り対策

 以前も弁護士ブログで書きましたが、タイでは、外国人事業法により外資による事業活動が禁止されているものがたくさんあります。
 そして、その規制をくぐり抜けるために、タイ人の名義を借りて(つまり、タイ人が出資して株主になったように仮装して)、タイ資本の会社に見せかけるという手法が横行しています。特に、日系中小企業のほとんどがそうだといっても過言ではありません。

 外国人事業法は、このような名義借りを防止するため、名義を貸したタイ人、名義を借りた外国人を処罰できるように罰則まで設けていますが、効果がありません(この点も、以前ブログで書きました)。

 そこで、このような名義借りを防止するため、出資者であるタイ人が本当に出資したのかどうかを確認できるように、6ヶ月前までの銀行預金の記録、又は資金に関する銀行の証明書等を提出しなければならなくなりました(2006年7月20日付登記規則、同年8月2日官報により公布)。
 したがって、タイ人の名義を借りて設立登記することが以前よりも難しくなっています。