1 FX関連事件
高レバレッジで人気のFX(為替証拠金取引)。
少ない手元資金でその100倍から600倍もの取引ができると言われています。
例えば、手元資金の100倍で取引する場合、100万円あれば1億円の取引ができてしまいます。そのため、手元資金の少ない通常の人たちでも簡単に取引に参加できることができます。普通のサラリーマンでも主婦でも参加できる手軽さがあります。
また、このようなすさまじいレバレッジ効果があるので、わずかな為替変動でも大金を稼ぐことができちゃいます。
そういえば、以前、主婦がFXで4億円も稼ぎ、1億3000万円を脱税したなんて事件もありました。これは事件として報道されたのでご存知のかたもいると思いますが、通常、儲けただけでは報道されませんので、実際には私たちが知っている以上にFX長者が誕生しているはずです。
また、このような一攫千金を夢見る市民を騙す悪質業者も増えているようです。そのうちの1つ。今年7月、大阪にある「アライド」という投資顧問会社が280人から20億円を集めたことが報道されていましたが、この会社は無登録営業だったようで、大阪府警に検挙されました。
この会社は、「FXで何億円を瞬時に稼ぐ、すご腕トレーダー」と喧伝して大金をかき集めていたそうです。
2 規制強化
レバレッジ効果で大金を儲けること自体は別に悪いことではありません。
レバレッジ効果があるということは、高いリターンが期待できるのと同様に、大きな損失を被る可能性もあるということです。先ほどの主婦のケースでいうと、たまたま4億円儲かりましたが、4億円の損失を被ることも十分起こりうるということなんです。一般の主婦が4億円の損失を被ったら大変ですよね。誰が責任を取るんでしょうか。その主婦はもちろん、誰も責任を取れませんよね。
これは大変な問題なわけです。4億円支払う能力のない人が4億円稼げる取引に参加するのはどこかおかしい。
こうしたレバレッジ効果に対する規制の目的は、「稼いじゃいかん」ということではなく、大きな損失を防ぐことにあります。
規制の方法は、基本的に2つあります。
1つは、大きな損失が生じる前に、FX業者が「強制手じまい」してしまう方法です。強制手じまいとは、証拠金を超えた損失が発生した場合に、取引を損きりで強制終了させる仕組みで、「ロス・カット・ルール」と呼ばれます。これは、今までも行われてきたんですが、徹底されていなかった様子。金融庁が8月1日に施行した「顧客資産の保護強化」のための内閣府令では、この強制手じまいを徹底させることになっています。
もう1つの方法は、レバレッジ自体を規制してしまう方法です。これまでのFX取引では、手元資金の100倍を超える取引はざら。そこで、このレバレッジ、すなわち、取引の倍率を規制してしまうのです。
金融庁は、先の内閣府令の中でも掲げているように、2010年度末までには、このレバレッジを50倍以下まで下げることを目標にしています。そして、2011年以降は、25倍以下に抑える。このように、レバレッジの倍率を段階的に下げていこうというわけです。
しかし、それにしたって、50倍や25倍もかなりの高レバレッジですよね。
3 問われる業者のコンプライアンス
強制手じまいが徹底されてこなかったことからも分かるように、金融庁が規制を強化しても、これが遵守されなかったら、規制の効果は出ません。
おろらく、今後、金融庁は、単なるルール作りだけではなく、規制強化の実施面でも力を入れていくはずです。
そうしたビジネス環境の下で、検挙される業者も今後増えていくことが予想されます。
結局、コンプライアンスを遵守していったFX業者が、この業界で生き残っていくものと思われます。