1.はじめに
今回の薬事法改正で、登録販売者を置けば、大衆薬の販売ができるようになったことは、前回のブログで書きました。
(前回のブログはこちら:6月1日 改正薬事法施行)
登録販売者を置くことが絶対条件になるので、改正薬事法の理解を深めるためには、この「登録販売者」は重要なキーワードです。
そこで、今回は、この登録販売者について、少し踏み込んで解説してみたいと思います。
2.登録販売者試験
投句販売者になるには、都道府県知事が実施する試験に合格しなければなりません(薬事法第36条の4第1項)。そして、合格したら登録販売者として都道府県知事の登録を受けて、医薬品の販売・授与に従事することができます(同条第2項)。
登録販売者試験の受験資格については、薬事法施行規則第159条の5に規定されています。具体的には、次のとおりです。
① 旧大学令に基づく大学及び旧専門学校令に基づく専門学校において薬学に関する専門課程を修了した者
② 平成18年3月31日以前に学校教育法に基づく大学(短期大学を除く)に入学し、当該大学において薬学の正規の課程を修めて卒業した者
③ 平成18年4月1日以降に学校教育法に基づく大学に入学し、当該大学において薬学の正規の課程を修めて卒業した者
④ 旧制中学もしくは高校又はこれと同等以上の学校を卒業した者であって、1年以上薬局又は店舗販売業もしくは配置販売業において薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した者
⑤ 4年以上薬局又は店舗販売もしくは配置販売業において薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した者
⑥ 前各号に掲げる者のほか、一般医薬品の販売又は授与に従事しようとするに当たり前各号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると都道府県知事が認めた者
これを読んでお分かりのように、当然といえば当然ですが、薬学に関する専門知識ないし経験が求められています。したがって、原則的には登録販売者になるのも、それほど簡単なものではないと言えそうです。
ただ、抜け道としては、高卒であれば1年以上、中卒であれば4年以上の実務経験で受験資格が得られる点です。それでも、試験は、それなりに難しいと思われますので、簡単になれるとは考えない方がいいでしょう。
では、参考程度に薬剤師の受験資格と比較してみましょう。
薬剤師国家試験に関しては、薬剤師法が規定しています。同法15条をみると、薬剤師試験の実験資格は、
① 学校教育法に基づく大学において、薬学の正規の課程を修めて卒業した者
② 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が前号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定した者
これを読んで分かるように、大学で薬学を勉強した者を受験者として想定しています。
登録販売者の試験と比べると、間口、すなわち、受験資格の段階で絞られています。したがって、登録販売者よりもずっと狭き門であると言えそうです。
では、試験内容はどうでしょうか。 今度はまず、薬剤師試験の方から見てみましょう。 薬剤師法施行規則第8条は、受験科目として、次の4科目を定めています。
① 基礎薬学
② 医療薬学
③ 衛生薬学
④ 薬事関係法規及び薬事関係制度
では、登録販売者試験の方はどうでしょうか。こちらでは、厚生労働省令で定めるところにより試験を行うとされ、次の事項について筆記試験が行われております。
① 医薬品に共通する特性と基本的な知識
② 人体の働きと医薬品
③ 主な医薬品とその作用
④ 薬事に関する法規と制度
⑤ 医薬品の適正使用と安全対策
試験の内容として掲げられている項目だけ見ると、登録販売者の方が幅広い知識を求められているように読めるかもしれません。
でも、そうではないと思います。
私は、薬学の専門家ではないので確実なことをは言えませんが、登録販売者試験の①から③は、薬学の基礎的な範囲にとどまると思われますので、薬剤師試験の①基礎薬学の範疇におさまるでしょう。登録販売者試験の④は、薬剤師試験の④に対応していますが、薬剤師試験に比べればはるかに基礎的な知識にとどまるのではないでしょうか。登録販売者試験の⑤は、薬剤師試験の①又は⑤に対応するのではないかと思われますが、薬剤師試験よりも難易度はずっと低いと思われます。
3.試験と規制緩和
なぜこのように試験制度を掘り下げて分析してみたのかというと、今回の改正薬事法による規制緩和の効果が果たしてどこまであるのかが、受験資格と試験の難易度により決まるからです。
一見規制緩和しているようにみえても、登録販売者の試験が薬剤師試験ほどではないにしても、それに準ずるほど難しければ、規制緩和の効果はそれほど大きくないはずです。登録販売者の確保が困難になるからです。
私の専門外なので試験内容にまで踏み込んだ判断はできませんが、少なくとも受験資格という点では、登録販売者試験の門戸は、かなり開かれているように思います。
では次回は、登録販売者が扱える医薬品のついて、薬剤師の場合と比較しながら分析してみたいと思います。