自分の財産を子や孫に承継させたい場合、遺言による相続を想定することが多いと思います。一方で、遺言相続と類似した制度として、「遺言信託」というものがあります。今回は、この遺言相続、遺言信託の基本的な違いについてお話します。

 信託とは、契約、遺言等によって、特定の者が一定の目的に従って、財産の管理または処分その他の必要な行為をすることをいいます。

 かつて、旧信託法によって信託を行うことはできましたが、個人に対して信託をすることは難しく、信託銀行が営利目的で行うなどの商事信託が主として行われていました。しかし、2007年に現行信託法が施行され、信託を容易かつ多様に行えるようになったのです。

 信託の特徴は、「確実さ」と「多様さ」にあります。

 遺言相続の場合には、遺言者が死亡してから受遺者に承継されます。しかし、相続が生じるまでの間に遺言者の意向とは異なる者に取得させたり、相続が生じた後、第三者が受遺者を騙して財産を取得するといった危険があります。

 これに対して、遺言信託の場合には、相続が生じるまでの間に信頼できる第三者に財産を管理させることができます。さらに、相続が生じた後においては、受遺者が使用するものの、第三者が管理し続けるということもできます。

 また、遺言相続の場合には、遺言者の死亡に伴う相続について財産の承継を定めることができますが、遺言者Aは「Aの亡き後、本件土地はBに相続させ、Bの死亡後はCに相続させる」などといった「後継ぎ遺贈」をすることはできないと考えられています。

 これに対し、遺言信託では、このような後継ぎ遺贈をすることができると明文化されています(信託法91条)。

 遺言信託は、第三者(信託銀行など)に財産管理を委託する必要があるため、遺言相続に比べて、時間と費用の負担が大きくなる場合もありますが、上記のとおり、遺言相続に比べて、より確実に、より多様に財産を承継させることができます。

 ご自身の大切な財産を承継させるにあたり、ご検討してみてはいかがでしょうか。