神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が発見されたというショッキングなニュースが連日報道されました。報道では、事件現場となったアパートの様子が頻繁に流れ、インターネットでも「座間市 殺人」と検索すればアパートの場所や名前まで簡単に特定することが可能です。賃貸物件において、このような殺人や自殺等の事件・事故が起こった場合、該当物件はいわゆる「事故物件」という扱いになり、賃料が相場より大きく減額されたり、入居候補者に事故の存在を告知する義務が生じるためなかなか借り手が見つからなかったりとオーナーは様々な不利益を被ります。

 その法的な根拠は、事件や事故により当該物件には心理的瑕疵がある、と判断される点にあります。仮に、賃貸人が、自殺や殺人があったことを入居候補者に告知せずに貸してしまった場合には、後日入居者より損害賠償や契約の解除を請求される可能性があります。過去の裁判例では、自殺による心理的瑕疵は、時間の経過により徐々に希釈されるものであるとしつつ、自殺があった時点から4年間は入居候補者にその旨を告知する義務があると認めたものもありますし、それよりも長い期間の告知義務を認めた裁判例もあります。

 告知義務がいつまで求められるのかという点については、物件が存在する場所、単身者向けか、事故の周知性など様々な事情を考慮して判断されるため、具体的な期間を確定することはできません。今回の殺人事件については、その事件の内容が非常にショッキングなものであること、頻繁に報道されたため周知性が高いことなどの事情からすれば、相当長期間の告知義務が発生するものと考えられます。

 このような心理的瑕疵の発生により、オーナーは経済的損失を被ることになりますから、法的には自殺者の遺族や殺人事件を起こした当事者、連帯保証人に対し、賃料減額分の逸失利益を請求することが可能になります。ただし、このような請求をしても任意に支払われない場合には、裁判を起こす必要があります。