「優越的地位」にあたるかについては、「B社にとってA社と取引を継続できなければ、事業経営上大きな支障を来す。」といえる関係があるか否かにより判断されます。判断においては、ⅰ取引依存度、ⅱA社の市場における地位、ⅲB社が取引先を変更できる可能性、ⅳ取引をすることの必要性等の事情が総合考慮されます。
また、「優越的地位の濫用」にあたるものとしては、①購入・利用強制、②協賛金等の負担要請、③従業員等の派遣要請、④返品、⑤取引の対価の一方的決定等が挙げられます。
食品業界においては、例えば、大手食料品スーパーが、セールに供する商品について、取引先納入業者と協議することなく、取引先納入業者の仕入価格を下回る納入価格を定め、その価格で納入するよう一方的に指示して、自己の通常の納入価格に比べて著しく低い価格をもって納入させること等が⑤取引の対価の一方的決定の例として考えられます。
一方で、同じような納入価格の一方的な決定であっても、災害時に食品等を一時的に廉価で販売するにあたり、納入業者にも値引きを求める事案については、購入後に値下げを要求する場合でなければ、「社会公益的な目的に基づくものであり、品目、値段等が限定されている場合は、直ちに法に違反するものではない」との公正取引委員会の見解が示されています。
このように、ある取引が優越的地位の濫用にあたるか否かは、判断が困難な場合があります。大企業の場合は、規模に格差のある取引先との間で、相手方に一方的な負担を求める態様の取引をする場合には、一度、弁護士等の専門家の見解を確認すべきでしょう。また、大口の取引先から一方的に負担を押し付けられて苦悩している企業は、違法な取引を強制されている可能性があります。不公正な取引の解消のためにも、やはり専門家に相談することをお勧めします。