他の事業者に食品等の製造を委託している場合、いわゆる下請法の適用に留意する必要があります。下請法とは、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、発注者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まることを目的として制定された法律です(下請法第1条)。
下請法の適用があるか否かは、取引当事者の資本金等により変わります。例えば、資本金総額3億1円以上の食品販売事業者が、資本金3億円以下の会社や個人事業者に対して食品製造を外注する場合や、資本金総額1千万1円以上の食品販売事業者が、資本金1千万円以下の会社や個人事業者に対して食品製造を外注する場合は、下請法が適用されることとなります。
下請法上、発注者である親事業者には、様々な禁止事項が定められています。一例を挙げると、下請事業者が納入した製品について、親事業者が下請事業者に責任がないのに受領を拒む行為や、発注時に決定されていた下請代金を下請事業者に責任がないのに発注後に減額する行為は禁止されています(第4条1項1号、同項3号)。また、親事業者は物品等を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わなければなりません(第4条1項2号)。このほか、親事業者が、正当な理由がないのに、親事業者の自社製品等を強制的に下請事業者に購入させたりする行為は、購入・利用強制となり、下請法違反となります(第4条1項6号)。なお、これらの行為は、たとえ親事業者が下請事業者から了解を得ていたとしても下請法違反になるものと考えられています。 下請法に違反した事業者に対しては、公正取引委員会から違反行為の是正や下請事業者の被った不利益の回復措置、再発防止措置等を採るべきことを内容とした勧告がなされることが予定されています(第7条)。そして、当該勧告の内容は公表される運用となっており、企業名や違反事実の概要などが一般に周知されることとなります。
数年前、大手の食品加工製造業者が自らの利益確保のために、下請事業者に対し、「協賛金」「不良品歩引き」等と称して、下請け代金の額に一定率を乗じて得た額を負担するよう要請し、当該要請に応じた下請事業者19社に対し、下請事業者の帰責性が無いのに下請代金の額を減じていたことが発覚しました。当該行為に対しては、公正取引委員会からの勧告がなされましたが、当該勧告内容は一般にも公表され、数年経った現在でも一般人が容易に知り得る状態に置かれています。
企業の法令遵守が強く叫ばれる昨今、下請法違反は企業価値を大きく損なう行為といえます。
食品製造業者が発注をする場合は、下請法に違反しないように留意する必要があります。他方で、発注者から不合理な要求等をされた場合は、下請法による是正措置をとることができないかを検討することが考えられます。