「お・も・て・な・し。豪華オーシャンビュー!宿泊料金(ツイン1泊2日朝食付き)通常料金一人4万円のところ、3月5日~20日に限り2万円!!」
などといった広告を見かけることがあります。宿泊先を探す立場としては、同じ2万円を支払うにしても、もとの料金が高い方がお得感があり魅力的に映るものですが、こういった表示に問題はないでしょうか。
事業者が、自己の商品やサービスの販売価格を自主的に決定することは、事業活動において最も基本的な事項です。一方、消費者にとって、価格表示は商品やサービスの選択する上で重要な情報です。この価格表示が適正に行われなければ消費者の選択を誤らせることになりますし、市場の公正な競争が阻害されることになります。
不当景品類及び不当表示防止法は、事業者の販売価格について、一般消費者に実際のものまたは競争事業者に係るものより著しく有利であると誤認される表示を”不当表示”として規制しています。
この規制は商品もサービスも対象になり、もちろん、宿泊料金の表示も含まれます。一般消費者に対して行われる価格表示であれば、表示媒体の種類を問わず、チラシ広告、新聞・テレビ広告、インターネット広告と、いかなる媒体の料金表示も規制されます。
事業者が、自己の販売価格に当該販売価格よりも高い、他の価格を併記して表示することを「二重価格表示」と呼びます。その内容が適正である分には、消費者の選択に資する上、公正な競争促進にも一役買うと言えるでしょう。しかし、比較対象価格に適正な表示が行われていなければ一般消費者に誤認を与え、不当表示に該当する恐れがあります。
例えば、過去の販売価格を比較対象とするケース(セールの際に、過去短期間しか適応されていなかった価格を「通常価格」などと表記して比較対象価格とする、など)のように、二重価格表示にも色々なカテゴリーがあります。
冒頭のケースは、他の顧客に販売した価格を比較対照価格とするカテゴリーに該当します。
他の顧客向けの販売価格を比較対照価格とする二重価格表示をする場合、販売価格が適用される場合の条件について、実際と異なる表示をしたり、あいまいな表示をしたりすると、不当表示に該当する恐れがあります。
それは、例えば誰でも会員になることができ、非会員価格で買う者など存在しないのにも関わらず、非会員価格を比較対象価格に用いることなどが挙げられます。
季節や時期によって繁閑の差が大きく、販売価格も変わることはホテル・旅館でもよくあると思いますが、ピーク時期が特定の時期に限定されていて、オフシーズンの販売価格を表示するときに、ピーク時の価格が平均的であることの印象を与える表現をするなどして、比較対照価格として用いることは、誤認の恐れがあります。
具体的には、夏休みや年末年始などのハイシーズンだけに適用されている宿泊料金を比較対象価格に用いると、不当表示に該当するかもしれません。冒頭のケースでは、「一人4万円」が、年末年始限定の価格であり、3月5日~20日がハイシーズンではなければ、不当表示とみなされる可能性があり、注意が必要です。