ホテル・旅館を利用していると、チェックインの際にお世話になった従業員の方が、翌日のチェックアウトでも対応してくださることがあります。法律家の目からすれば、従業員の皆さんはいつ休んでいるのかと疑問を抱くときがあります。
労働基準法上は勤務時間や休日等についての規制がありますから、もちろん休んでいるとは思いますが、先のケースのように日をまたぐような勤務形態が通常である旅館業においては、休日の設定はそう簡単な話ではないと思われるからです。
労働基準法35条において、従業員の休日は1暦日、すなわち1日の午前0時から継続した24時間を与えなければならないと規定されています(昭和23年4月5日 基発535号)。これは日中に働いている勤務形態を前提としていますが、これに対して旅館業の勤務形態は日をまたぐことを基準に設定されています。
この基準に基づいて休日を考えると、例えば当日のチェックアウトから翌日のチェックインまで、といったよう2暦日にまたがる24時間を設定することが、従業員管理のシステム上、合理的と考えられます。しかし、「1暦日の休日を与えなければならない」となると、就労を終えた日の翌日1日を丸々休みにしなければなりません。例えば、当日のチェックアウトから休むとすると、次の就労は早くても翌々日のチェックイン以降になります。これではホテル・旅館の経営上、不都合が生じかねません。
厚生労働省は、旅館業における休日に関する指針を示しています(昭和57年6月30日 基発446号等)。原則は旅館業も、休日は暦日で与えなければならないものの、例外的に一定の条件のもとに労働基準法に違反しないで2暦日にまたがる休日を与えることができる、としています。
その条件の1つ目が、対象労働者についてです。2暦日にまたがる休日を与えることができるのは、フロント係、調理係、仲番及び客室係に限るとされています。
条件の2つ目は、休日の定め方です。正午から翌日の正午までの24時間を含む継続30時間を、休息時間として確保する必要があります。具体例として、午前9時に業務を終了した従業員が、そこから休日に入って、翌日の午後3時から再び就労する、ということであれば、当該条件を満たすことになります。
さらに、条件の3つ目としては休日が2暦日にまたがる形で付与されること、および休日の時間帯についてあらかじめ従業員に明示する必要がある、ということです。
事業者には、労働基準法を遵守し、かつ指針で示した条件を満たすということに加えて、関連する事項として、遵守しない場合には指導の対象となる3つの条件が課されています。
これは、1年間における法定休日日数の内少なくとも2分の1以上は暦日で与えること、②休日は前月末までに勤務割表等により具体的に明らかにすること③1年間に法定休日日数を含め60日以上の休日を確保すること、です。
以上のように、遵守すべき点多いのですが、ホテル・旅館業の実務に応じた休日を運用することは可能です。御社の従業員の休日取得がこれらのルールに則っているかどうか今一度の確認をお薦めいたします。