舛添都知事が有権者からのバッシングを浴び続けて大変なことになっていますね。
セコいとか何だとか色々と言われ続けていますが、前知事の辞職も汚職が原因であったことを考えると、我が国の首都たる東京の知事として何とも情けない限りです。
舛添氏が様々な疑惑を払拭するために用いたのが、「第三者」たる弁護士による調査でした。昨日、その調査結果の発表があったわけですが、バッシングがやむ気配は一向にありません。私も、第三者である弁護士の調査報告書を入手しザッと一読しましたが、基本的には支出が「適切か不適切か」という観点から指摘を行う書面となっており、いわば「違法性はない」ことを改めて確認するような内容であるとの印象を受けました。結論の当否はともかく、これではマスコミや有権者が納得しないのも無理はないよなあ、と思わずにはいられません。
ところで、我々弁護士が、様々な不祥事に関する調査を行うことは少なくありません。特に近時は、コンプライアンス意識の高まりや不祥事によるSNS等を通じての「炎上」が目立つことなどを背景に、第三者委員会を活用する事例が目立つようになってきています。
このような弁護士の役割に照らし、日弁連は、第三者委員会を立ち上げるにあたってのガイドラインを策定しています。このガイドラインは、たとえば委員の数は3名以上を原則とすることや、調査手法としてヒアリングや書証の精査を行うべきこと、独立性や中立性を担保すべきことなどを定めるもので、最終的には「(調査対象である)企業等の信頼や持続可能性を回復する」ことを目標として第三者委員会が必要かつ十分な調査を行うべきことをうたっています。つまり、第三者委員会は、不祥事が生じたときにその原因を徹底して追及し、責任の所在を明らかにするとともに、再発防止のための助言を行うことで、不祥事を引き起こした組織の社会的責任を全うさせるためのものであるということができます。
調査対象となる不祥事の規模や内容、性質にもよりますが、一般に第三者委員会を立ち上げて調査を行うような事例では、調査期間が数か月間、のべ数百時間にもわたることが稀ではありません。当然ながらそれに呼応して相当の費用も要することとなりますが、それだけ徹底した調査を経た報告であるが故に、その内容や結論には説得力が生じるともいえます。
さて、今回の舛添氏の一件、「第三者」として選任されたのは2名の弁護士。調査補助者としてさらに2名の弁護士による協力を仰いだとのことですが、記名起案者が上記ガイドラインの定める人数に足りないことは事実です。さらに、実際に選任されてから報告書が公開されるまでの期間はわずか2週間。報告書は51ページにも及ぶ大部なものですが、その起案のための時間も考えれば、実際の調査にあたることのできた時間は極めて限られたものだったことが容易に想像できます。現に、報道限りでは、関係者からの十分なヒアリングが実現していたとは必ずしもいえないようです。
何より、個人的には、本件の幕引きに「第三者による調査」を用いようとしたこと自体に強い疑問を抱いてしまいます。上述のとおり、第三者委員会は「不祥事の原因追及と責任の所在の確定」を目的とするものであり、「違法ではない」ということをうたった報告書の内容が説得力に欠けるのは道理です。その上、本件の核心は「違法か違法でないか」という問題以前に、「当該支出を是とした政治家としての資質」について、有権者が疑念を呈していることにあるように思います。弁護士はあくまで「第三者」であって、政治家ではありません。究極のところ適否判断は本人の考えに委ねられるべきところであり、これを第三者に委ねようとした舛添氏の姿勢そのものが今後問われることになるのではないでしょうか。