前回は、高齢者が巻き込まれやすい消費者被害を題材に相談事例を紹介しましたが、今回は、高齢者の方が巻き込まれやすい振り込め詐欺の救済法に関する法制度をお伝えしようと思います。

 振り込め詐欺に関しては、警察及び消費者庁などから注意喚起が継続的に行われており、振り込め詐欺自体を知らない人はほとんどいなくなっているのではないでしょうか。それでも、被害は継続しており、平成25年中には全国で5400人、約171億円の被害があったと発表されています。被害はいまだに止まず、手口が巧妙化する一方です。

 振り込め詐欺の救済については、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」が施行されています。

 手続きの流れは、詐欺その他財産を害する犯罪行為に預金口座への振り込みが利用された後、当該預金口座を有する金融機関へ情報提供を行い、犯罪利用の疑いがあると認められた場合に、当該預金口座における取引が停止されます。取引が停止されれば、その預金口座に残っていた残高について、分配に向けた手続きが取られることになります。具体的には、公告手続きを行うことで、預金名義人が預金口座からの引き落としを行う権利を消滅させるとともに、同じ預金口座へ振り込みを行った被害者を募り、被害者全員で分配することになります。なお、公告手続きは、預金保険機構のホームページで行われており、すでに振り込みを行ってしまった場合には、既にほかの被害者の方が手続きを行い、取引停止となっていないか確認することができます。

 金融機関への情報提供については、弁護士会と各銀行の間で取り決めが行われており、弁護士に依頼を行って所定の書式を利用して行うことによって、取引停止措置については可能な限り速やかに行われるようになっています。しかしながら、振り込みの時期から暫く経ってしまうと、振り込んだ金員はすでに引き出されてしまっており、口座の残高は非常に少額になってしまっている例も少なくありません。

 救済手続きをとることなく、泣き寝入りする必要はありませんので、まずは弁護士へ預金口座の取引停止を依頼することが第一です。しかしながら、実効性の観点からは必ずしも満足のいく結果が得られないこともありますので、やはり被害が生じる前に予防することが非常に重要であり、いまだに振り込め詐欺に関する被害が止んでいないことは十分に認知してもらう必要があると思います。