こんにちは。

 前回は長時間労働と精神疾患という観点からお話しさせていただきましたが、今回は長時間労働ではないものの、労働者に連続して深夜労働をさせる場合の合法性に関する判例(最判平成25年4月16日決定により確定。以下は、2審である東京高判平成23年1月20日に基づきます)を紹介させていただきたいと思います。

1.事案の概要

 本件では、Y会社に勤務する労働者Xらが、就業規則に定めのある「深夜勤(ふかやきん)」について、Y会社が連続して「深夜勤」を行わせたことにつき、①連続「深夜勤」を指定を認める労働協約の無効、②連続「深夜勤」が憲法13条、18条、25条及び国際委人権規約に違反するものとして、Y社による連続「深夜勤」指定を差止め、及び③連続深夜勤に関する損害賠償請求を行ったものです。

 「深夜勤」とは、原則として、暦日をまたいで一日分の勤務を行う深夜帯の勤務を言い、基本的な形態として、始業時刻を午後9時、終業時刻を翌日午前8時とする「10深夜勤」と、始業時刻を午後10時、終業時刻を翌日午前6時45分とする「8深夜勤」があります。そして、Y会社においては、深夜勤のみを日勤や他の調整勤務と併せることなく、単独で連続して指定することができ、回数制限はありませんでした。

2.判決

 判決においては、基本的に連続「深夜勤」を指定することについて合法とされました。その際、Xらが主張する連続「深夜勤」の健康への悪影響について、「一般に、深夜勤務が人間の本来の生活リズムと異なる生活リズムを強いるものであることから概日リズムの乱れによる睡眠障害や疲労蓄積等、健康に対してよくない影響を及ぼす可能性があることは否定できない」としながら、具体的な影響が証拠上明らかではないということから、「連続「深夜勤」の指定が直ちにXらの健康に重大な悪影響を及ぼしXらを過労死等に追い込むものであるということはできない」としたうえで、日本における他企業と比較しても著しく過重なものであるということはできないとしました。

 また、「深夜勤」の必要性合理性についても競争の激化やより高いサービスの提供が不可欠とし、「深夜勤」の継続は避けられないとして、不合理であるとはいえないとしました。

 また、安全配慮義務違反についても、連続「深夜勤」が直ちにXらの身体的精神的健康を害するものではないこと、「Y社においては、「深夜勤」を含む深夜帯の勤務に従事するものについては、健康診断等の一般的対策のほか、自発的健康診断の経費負担、成人病健診受診の自己負担分を女性誌、その結果に基づいて、必要に応じて時間外労働及び「深夜勤」勤務の指定の制限等の措置を採ってきた」としたうえで、安全配慮義務違反はないとしました。

3.深夜労働について

 以上の判示から、深夜帯に労働させることは直ちに違法とはならないものの、日勤とは異なり一定程度の負荷がかかることを十分認識した上で、健康診断や産業医との面談等を行い、労働者の健康について把握した上で、場合によっては深夜帯労働を制限する等、適切な労務管理を行っていくべきと考えられます。

弁護士 中村 圭佑