相談内容

 最近、外国人の入居希望者が増えてきています。外国人の在留資格を確認するにはどうすればよいでしょうか。

 日本人とは文化も異なると思いますし、きちんと使用してくれるのか心配もあるのですが、どういった点に注意しておく必要があるのでしょうか。

 また、賃貸借契約書は日本語でしか用意していないのですが、それでも問題ないのでしょうか。

回答

 外国人の方は、労働可能な在留資格を有していない限りは、長期的に滞在することはないはずですが、今後、日本国内で労働可能な在留資格の拡大も検討されており、日本国内で長期的に滞在する外国人は増えていく可能性があります。おそらく、賃貸物件に入居する方がほとんどでしょうから、外国人向けの賃貸物件の提供に向けて準備しておくことは無駄ではないでしょう。

 外国人に貸す場合は、不法滞在を援助することにならないように、在留資格の確認を実施するべきです。

 在留資格については、90日以上の滞在を許可された外国人であれば在留カードを携帯しているはずです。在留カードには、滞在可能な期限が記載されているはずですので、期限を徒過していないことを必ず確認してください。

 賃料の支払い能力などを知るためには、日本人と同様に収入証明を取得することも重要ですが、働いている会社が在留資格の範囲内であるのかという点も重要です。在留資格外の活動をしている場合には、入国管理法違反となり、帰国させられてしまう恐れがあります。

 文化の相違が問題となる点として、契約時に支払う敷金や礼金の意味や明け渡しの際の原状回復費用の負担、更新時の更新料、共益費の負担などがあります。これらの費用については十分な説明が必要となりますが、理解が得られないことも多いため、これらの費用を見込んで賃料の額に反映させておくということも検討に値するでしょう。また、生活音やゴミ出しなどについても各国ごとに考え方が異なりますので、日本での生活ルールについては、しっかりと伝えておかなければ、周囲の住民とのトラブルなどを引き起こす恐れがありますので、十分に注意しておくべきでしょう。

 契約書の用意が日本語だけの場合でも、契約は成立する場合がありますが、できれば、賃貸借契約書の翻訳文をつけ、少なくとも重要な点(賃料、物件の面積、解除事由や無断転貸が違反となることなど)は外国人が理解可能な言語で伝えられるように用意しておいたほうが良いでしょう。特に、無断転貸が禁止されていることに関しては国ごとに文化も異なり、近親者であれば借主が交代しても構わないと思っている方や友人に転貸してしまうなど、トラブルの原因になっているように思われます。

 また、賃貸契約書にはわざわざ準拠法の定めがない場合も多いですが、念のため、準拠法が日本法であることや契約書の正文が日本語である旨を明記しておくことをお勧めします。

 契約の締結の際に、日本人であれば押印を求めるのが一般的ですが、外国人の場合には印鑑を持っていないことも多いです。印鑑を用意してもらうことも一つの方法ですが、サインのみで契約することも可能です。印鑑証明書の代わりに、サイン証明の提出を求めておけば、後日、サインしたことはないなどという紛争を予防することに役立ちます。

 国土交通省のホームページには、賃貸住宅標準契約書について、英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語の5か国語について翻訳版を掲載しています。各社の契約書に合わせた記載にする必要はありますが、参考になると思われますので、一度確認してみてはいかがでしょうか。