この制度は、認知症や知的障害等の理由で判断能力が低下した方のために、財産管理や介護施設への入所等を手助けするための制度です。成年後見人に選任された人は、本人(判断能力が低下した方)の代理人として、本人が所有しているアパートや預貯金の管理、介護施設の入所契約の締結等身の回りの生活をサポートします。

 この制度を利用するためには、本人や親族が裁判所に後見開始の申立てをし、裁判所が成年後見人を選任しますので、申し立てた方の希望通りとは限りません。選任された成年後見人の割合は、弁護士等の専門家7割、親族3割となっております。
 また、本人の判断能力が低下した場合に備えて、前もって後見人となってほしい方と任意後見契約を結ぶ任意後見制度という制度もあります。この制度は、任意後見人に加え、その業務を監督する任意後見監督人の選任が必要になります。

 成年後見人が、適切に本人の財産を管理することで、本人の生活がより豊かになることが理想ですが、現実には、成年後見人による本人の財産の不正利用等が社会問題化しています。恥ずかしながら弁護士等専門家による本人の預金着服事件等も発生していますが、不正の9割以上は親族が成年後見人に選任された場合であり、その不正の防止策が重要な課題となっています。親族の1人が本人の財産を遊興費等に消費してしまい、横領罪で逮捕されたり、本人が亡くなった後の相続の段階で問題が表面化し、親族間の関係が悪化する等不正が本人及びその周りに与える影響は深刻です。

 自分がいざ判断能力が低下したときの財産管理について、周りに迷惑をかけないためにも、元気なうちに信頼できる専門家を探す、任意後見契約を締結しておき任意後見監督人によるチェックを受けることができる体制を整えておく等の事前準備をとることが重要です。