A.
ご質問のケースでは、遺留分減殺請求の調停の申立を行うことが適切であると思慮致します。

理由については、次の3点になります。

①当事者同士の時間帯の調整・任意の話し合いによる解決の可能性について
ご兄弟のお時間が合わず、かつ、長男さんとはまともにお話合いができる状態ではないとのことなので、ご当事者同士の話し合いの時間の調整ですら困難であると思慮致します。

②裁判所という公的機関での話し合いについて
折り合いの悪い当事者での話し合いを延々と行っていても、解決ができる可能性は低いでしょう。かかる場合は、公平な第三者である調停委員を間に挟んだ話し合いの席を設けることが有益であると思慮致します。

③調停前値主義との関係
遺留分減殺請求については、調停前置主義を取っているため、調停をおこなってから、訴訟になります。ゆえに、いきなり訴訟をするのではなく、まずは、調停手続きを行う必要が原則としてございます。なお、消滅時効や信託会社との関係については、下記の通りです。

 信託銀行が遺言執行者の場合、弁護士が就任すると、弁護士は、信託銀行に対して受任通知を発送致します。かかる場合には、信託銀行は遺言執行を辞任することが大半です。ゆえに、早期に弁護士に依頼することが適切であると思います。また、辞任をしない一部の信託銀行に対しても、弁護士が窓口となることで、預金の払い戻しを禁止させることができます。

 相続人同士での裁判外での話合いをできない場合には、家庭裁判所に遺留分減殺調停を申立てることが適しております。かかる手続きは、裁判所において期日を指定し、裁判所からの呼び出しがあるため、出席があるケースが大半です。
 なお、仮に、調停の申立を行ったにも関わらず、一方当事者の方々が欠席を繰り返される場合には、調停の成立見込みがないとのことで、調停は不成立で終了致します。遺留分減殺請求調停は、不成立になった場合でも、当然に審判手続きに移行するものではありません。この場合には、家庭裁判所ではなく、地方裁判所に訴訟を提起することになります。調停は話合いによる解決を目指す手続きになりますが、訴訟手続きは、最終的に裁判官が判断をすることになりますので、事案の解決は可能になります。

 信託銀行が遺言執行者になっている場合、当該信託銀行の預金の払い戻しがされてしまう恐れがあります。そこで、信託銀行の方に、遺留分があることを主張し、預金の払い戻しを禁止させる必要がありますので、ご注意下さい。また、他の預金口座が分かっている場合にも、預金の払い戻しを禁止させる必要がありますので、他の銀行等に対しても、預金の払い戻しを禁止させるように注意しましょう。

 このようなケースで弁護士に依頼するメリットとしては、まずは、法律の専門家である弁護士から受任通知が到達すると、大半の信託銀行は、遺言執行者を辞任するので、預金の払い戻しの心配がなくなります。また、調停や訴訟においても、弁護士が法的な主張をすることで、自己の遺留分の主張を十分に行うことが可能になります。特に、訴訟手続きにおいては、当事者ではわからない訴訟手続きが多く存在しますので、弁護士に依頼することをお勧め致します。また、弁護士に最初から依頼することで、訴訟を見据えた調停の進行を行うことも可能になります。

 なお、遺留分減殺請求権の行使には、消滅時効(「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間」、民法1042条)がございますので、やはり早期に弁護士にご相談していただくことをお勧め致します。かかる消滅時効との関係で、裁判外において、内容証明郵便にて、遺留分減殺請求権を行使することが一般的です。

遺留分をさらに詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
【遺言で自分の相続分をゼロにされたが、せめて遺留分がほしい! | 遺産相続トラブル】