1 はじめに

 よくある相続のご相談として、「あのバカ息子には一銭も財産は渡したくない!」「相続は一切させたくない。」というものがあります。
 今回は、こういったご希望を実現する手段である廃除という方法につきご説明致します。

2 相続の廃除

 廃除とは、ある相続人について、相続資格を当然に否定されるほどの重大事由(このような事を欠格事由といいます。)はないものの、被相続人がその者に財産を相続させたくないのももっともだと思われるような事由がある場合に、被相続人の意思に基づいて家庭裁判所がその相続人の相続権をはく奪することを言います。

3 廃除事由

 2で述べたように、廃除が認められるためには、被相続人がその者に財産を相続させたくないのももっともだと思われるような事由がある必要があります。
 この事由について、民法は、①相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたこと、②相続人にその他の著しい非行があること、と定めており、①②いずれも、客観的に見て、被相続人と相続人の間の信頼関係が破壊されたと評価し得るものである必要があります。

 具体的に、裁判例で認められたケースには、
 末期がん患者の妻に対して、療養に不適切な環境を作り出し、その環境での生活を強いたり、人格を否定する発言をしたりした夫の事例、
 父の多額の財産をギャンブルにつぎ込んで減少させ、父が自宅を売却せざるを得ない状況に追い込んだ息子の事例
等があります。

4 まとめ

 以上のように、廃除事由が認められるかどうかについては、客観的に見て、被相続人と相続人の間の信頼関係が破壊されたと評価し得るものかどうかという点から、ケースバイケースで判断する必要がありますので、是非一度弁護士へご相談ください。

弁護士 森 惇一