非常に暑い日が続いていますね。仕事中に少し外出をするだけで、暑さでフラフラになってしまいます。その日一日頭がボーっとしてしまい、仕事になりません。営業の方を尊敬します。

 さて、今回は、相手が自己破産したら、慰謝料や養育費はどうなりますか、破産と請求のタイミングで変わりますか?といった問題について説明していきます。

 破産とは、簡単に言うと、破産者が、破産の申立てをした時の債務に、その時持っていた財産を分配し、不足する分についてはチャラにしましょうという手続です。ですから、破産の申立てをしたときに債権となっていなければ、チャラにされませんので、請求することができます。

 養育費とは、実際の監護によって日々発生するものであります。確かに、養育費の金額は、監護を開始した時点の収入状況、必要性によって額が定められます。しかし、あくまでも日々発生するものです。ですから、破産の申立てをされた時、将来請求できることになっているとはいえ、日々発生するものですから、チャラにされることはなく、請求できます。

 未払分については、将来日々発生するものではなく、既に発生している債権ということになります。しかし、破産法253条1項4号で、子どもの扶養に関する義務は免除されないこととなっていますので、未払分もチャラになりません。

 簡単に言うと、養育費は、破産や請求のタイミング、支払時期など関係なく、常にチャラにはされません。安心してください。

 次に慰謝料です。先ほど、破産によってチャラになるのは、破産申立時において債権となっているものですと、簡単に説明しました。ただ、破産申立時に債権となっていなくても、破産手続開始決定が出た時点より前に債権の発生原因があると、破産申立時の債権となります。

 慰謝料と一言で言っても、色々な原因があります。婚姻期間中の一切の事情を考慮する場合、不貞行為の一点のみを考慮する場合などです。不貞行為の例を見れば、不貞行為があった時が、慰謝料の発生原因時ですから、これと破産申立時の前後によって慰謝料がチャラにされてしまうか否かが変わるわけです。

 ただ、離婚の慰謝料の場合、諸般の事情をすべて考慮するのが通常だと思います。すなわち、離婚時にならないと、具体的な額の算定ができるものではありません。そのようなことを考慮すると、私は、離婚時と、破産手続開始決定時を比較し、前後かでチャラになるかどうかが決まるものと考えます。

 なお、既に発生していても、慰謝料はチャラにされないのではないか、という問題もあります。

 不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は免除されないこととなっています。「悪意」というのは、単なる故意ではなく、不正に他人を害する積極的な害意を指します。これに当たるようなひどい事情による慰謝料請求権は、チャラにならないことになります。ただ、「ひどい」というと語弊がありそうですが、不貞は酷いかもしれませんが、それだけでは「悪意」に当たるとは言えません。離婚の慰謝料の場合、「悪意」と認められるものを私はほとんど見たことがありません(わざと暴力行為をふるっていた場合などはチャラにされないものと思われます。)。慰謝料は、チャラにされてしまうものと思っておいた方がいいでしょう。

弁護士 松木隆佳